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南アフリカのサポーターはフレンドリー

2009年12月17日

 2010サッカーW杯の組み合わせも決まり、サポーターの熱気も本番モードに突入した。本大会に先立って南ア遠征を敢行した日本代表は11月14日、地元南アフリカ代表(愛称バファナ・バファナ)と親善試合を行った。ポートエリザベス・スタジアムで行われた試合は0-0のドローに終わったが、アフリカンならではの身体能力や一種独特なスタジアムの雰囲気を肌で感じる貴重な機会となった。熱狂的なサポーターに埋め尽くされた観客席で感じた、南アの熱気をリポートする。

 市街地から閑静な住宅地の中に入ると、おもむろに特徴的な白い屋根が見えてきた。スタジアムの正門にたどり着く前の段階で警備網が敷かれ、怪しいとおぼしき者は事情を聴かれる。エリア内に入る車は、車の下にまで警察官がもぐって調べる。その後、正門まで歩き警察官によるボディーチェックと持ち物検査が行われてゲートイン。安全確保に向けた南ア当局の毅然(きぜん)とした姿勢が感じられた。

 ある種物々しい入場を終えてスタジアム内に入ると、一転して陽気な雰囲気に包まれていた。試合開始前から大音量の音楽がガンガンに流れ、ブブゼラ(「ブォー」という音が鳴るプラスチックのラッパ)の音も交じって聞こえてくる。通路ですれ違う南アのサポーターたちは皆一様に盛り上がっていて、巨人原監督ばりのグータッチを求めてくる。「バファナ・バファナ~」と歌にならない雄たけびを上げるサポーターも、「ブルー・サムラーイ」と言ってエールを交わしたサポーターも、対戦国を敵国とみなしていないもよう。暴力的な雰囲気は皆無でいたってフレンドリー。サッカーは黒人、ラグビーは白人というアパルトヘイト時代の文化は消え、観客席にはバファナ・バファナを応援する白人の姿も数多く見られた。

 試合前ピッチに向かう通路で、バファナ・バファナの雄たけびが響きわたった。南アの選手たちとスタッフらが歌い踊りながら、ピッチに向かっていく。みな恍惚(こうこつ)の表情を浮かべる様子に日本代表もビックリ。

 試合がはじまると、ひっきりなしに鳴っているブブゼラの音をベースに、1つ1つのプレーで大きな歓声がわき上がっていた。グラウンドでプレーする日本の選手たちも、ブブゼラ音にかき消され、声が聞こえないし届かないとコメントしていた。この試合は「完全アウェー」とうたわれていたが、不思議とアウェーのヒリヒリ感はない。99%が南ア・サポーターだが、サポーターが一体となるような応援歌は聞かれなかった。決まりものの応援スタイルはないらしく、いいプレーがあれば大歓声が上がるし、勇気のないバックパスをすれば味方でも容赦ないブーイングを飛ばすといった具合だ。

 前半10分過ぎ、突然ウエーブが発生した。南アが絶好のチャンスを迎えたというわけでもなく、試合展開には全く関係なし。意味のない渦は、場内をグルっと2周していた。南アのサポーターにとって、バファナ・バファナの試合はお祭りなんだ、と感じさせた。相手を観客席から追い詰めたり、味方には下手なプレーはできないと思わせるような暴力的な空気はなかった。「完全アウェー」というよりも「フレンドリー」といった雰囲気だった。

 試合は、双方決め手に欠き0-0の引き分けに終わった。コンフェデ杯後の親善試合9戦8敗でパレイラ監督に代わったばかりの南アにとっても、チャンスらしいチャンスすらなく欲求不満がたまりそうな試合だった。しかし、帰路に就く人々からとげとげしさは感じらない。4万8000人が参加した祝祭を堪能し、来夏に来る本番の大祝祭を待ちきれないといった様子だった。

行ってきました南アフリカ
電子メディア局員・H
 南アフリカ代表との対戦でアウェーへ遠征した日本代表に便乗して、電子メディア局員・H(婚活中)も遠くアフリカ大陸へ飛んできました。独特の雰囲気に満ちたスタンドの様子や、アフリカならではのサファリ体験、驚きの食文化など、4回にわたりリポートします。

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