南アフリカW杯
ニュース

「聖なる手」ブラジル死の組突破／Ｇ組

: ゴール直前、右腕でトラップするルイスファビアーノ（ロイター）

＜Ｗ杯：ブラジル３－１コートジボワール＞◇１次リーグＧ組◇２０日◇サッカーシティー

　王国ブラジルが、ＦＷルイスファビアーノ（２９＝セビリア）の“ダブルハンドゴール”で決勝トーナメント進出を決めた。コートジボワール戦の後半５分、２点目となるルイスファビアーノのゴールは、トラップと見せかけて左腕と右腕を使ってボールをコントロールした疑惑弾。試合後に本人も、８６年メキシコ大会でマラドーナが決めた「神の手ゴール」を引き合いに、「聖なる手が助けてくれた」とハンドを認めた。

　わずか５秒間の出来事だった。ブラジル１点リードで迎えた後半５分。ルイスファビアーノは、ゴールキックをＤＦと頭で競り合おうとジャンプした。ところが、振り向きざまにボールが当たったのは、明らかに左腕だった。

　さらにピッチに弾んだボールを右足で浮かせてＤＦを抜き去ると、カットにきたＤＦをかわそうと再び浮かせて胸トラップを試みた。今度は右腕に当たったものの、そのまま豪快な左足ボレーシュート。一連の流れで２度も手を使いながら、フランス人主審の笛は吹かれなかった。

　ルイスファビアーノは代表戦では９カ月ぶりとなる先制弾と合わせ、この日２ゴールの大活躍。試合後、疑惑を「確かに当たったけど、もちろん故意じゃない」とあっさりと認めた。さらにマラドーナの「神の手ゴール」を引き合いに出し「私の聖なる手が助けてくれた」と屈託なく笑った。

　手の助けを借りられてはコートジボワール側もたまったものではない。エリクソン監督は「もちろんハンド。しかも１度でなく２度も。あれですべてが変わった」と主審を批判。エースＦＷドログバも「大きな失望だ。明らかなハンド。スコア２－１にした方がより公平になる」と怒りをにじませた。

　それでも、華麗なゴールであることは間違いなかった。ＤＦ陣の頭上を浮き球で抜き去って得点するプレーは、ブラジル代表のペレが５８年スウェーデン大会決勝で決めた伝説弾をほうふつとさせた。ルイスファビアーノも「僕のキャリアの中で最も美しいゴールの１つだった。だから（疑惑があっても）いいじゃない」と悪びれずに話した。

　これがペレやマラドーナのように語り継がれるゴールになるかは、ブラジルの今後次第。連勝で１次リーグ突破を決めたが、ドゥンガ監督は「次の試合に向け準備するだけだ」と達成感に浸ることはなかった。

　［2010年6月22日11時38分　紙面から］