「オレンジの洪水」に飲み込まれて...

６月２８日（月）
　パラグアイ取材の任務を終え、ダーバンを後にする。タクシーで空港へ向かう途中、オレンジ色のユニホームを身にまとった集団が大挙して通りを歩いていく。そう、オランダ代表のサポーターたちだった。

　この日は夕方１６時から、ダーバンスタジアムで決勝トーナメント１回戦でスロバキアと対戦。それに向かう人波で、交通渋滞が起こった。「何で、そこまで自信に満ちあふれているのか」。堂々と胸を張って闊歩（かっぽ）していく姿をながめ、そんなことを考えた。壁に向かって「立ちション」する輩の姿も見える。おれたちに怖い者はない―。そんな気概にあふれていた。

　９４年米国大会、マイアミでオランダ対アイルランドの試合を観戦した。その時も、スタジアムへ向かう「オレンジの洪水」に見舞われ、私は濁流に呑み込まれた木の葉のように、くるくる舞い続け、スタジアムにたどりついた。そしてスタジアムでは試合中、地鳴りのような足踏みが続き、スタンドは９０分間揺れた。とても落ち着いて試合を見られる環境ではなかった。そんな懐かしい記憶がよみがえった。

　ヨハネスブルクへ飛ぶ飛行機を待つ間、空港の喫茶店でオランダ対スロバキアをテレビ観戦した。前半にロッベンが強烈な左足シュートで均衡を破った。その瞬間、スタンドの「オレンジの洪水」がまた、破裂したかのように、あふれ返っていた。彼らにとって、Ｗ杯とは４年に一度のパーティーに違いない。彼らはあと何試合、美酒に酔えるのだろうか。