バスを降りたら......えっ、ここはどこ？

６月１６日（水）
　スペインがスイスの鉄壁の守備を破れず、０―１で敗れた。終盤はスペインが必死の反撃を試みるなど、両者の激しい攻防に「いいもの見させてもらったな」と気分よくスタジアムを出た。

　私が泊まっているホテルは、スタジアムから海沿いを歩いて１５分の場所にある。距離にすれば、約１キロ少々。昼間は人も多く、海風を感じながら歩いた。しかし、帰りの夜道を歩くのはさすがに怖い。ここは安全面を考慮し、メディア・バスで帰ることを選択。ただし、私の宿泊ホテルにバスは停車しない。会場ボランティアの女性にたずねたところ、あるホテル名を告げられた上で「そこで降りて少し歩けばいい」と教えられた。

　バスを待ったが、とうに時間を過ぎてもバスは来ない。３０分待ったところで待ちぼうけを食らうメディアたちの不満は頂点になり、会場ボランティアに抗議した。それから待つことさらに１５分、ようやくバスがやってきた。バスの運転手は「今日は道が大渋滞しているんだ」と終始、言い訳ばかり。バスが出発し、市内をぐるぐると巡回する。走り出して約２０分がたち、ようやく教えられたホテルで降りた。あとは数百メートル歩けば、私のホテルがあるはず。が、ない...。どこだ？

　ヤシの木が並ぶ、同じ風景の一本道。世界随一の犯罪国のフレーズが頭をよぎる。「ちょっとヤバくないか」。緊張感が高まる。マイク・タイソンのような男を見かけるたびに、ぞっとする。しかし、この日は幸いにも南アフリカ戦が行われており、そばの海岸でファンフェスタが行われ、多くの人でにぎわっていた。同時に多くの警官も立っている。大丈夫、と自分に言い聞かせて歩いた。そして約３０分。ついに自分の宿泊ホテルにたどり着いた。結局スタジアムを出て、１時間半はゆうにオーバーしていた。直線距離でわずか１５分の道のりなのに...。安全面に考慮したはずが、思いがけずも「肝試し」となってしまった。