2010年5月23日

＜中村憲剛:取材後記＞
　Ｗ杯日本代表に初選出されたＭＦ中村憲剛（２９＝川崎Ｆ）は「アンテナを張り巡らせる」ことにたけている。目、耳、体のすべてで情報をキャッチして取り入れる。都久留米高（現都東久留米総合高）時代の担任教師でありサッカー部監督、山口隆文氏（５２＝ＦＣ東京Ｕー１５むさし監督）の教えだ。
　２００人を超える部員の中で、トップに立つ「伸びしろ」が中村にはあった。技術は申し分なかったが、体力は最低クラス。しかし「アンテナの高さは１番高かった」と山口氏は笑顔で語る。中学サッカーで指導者に恵まれていなかったこともあり「良い意味でサッカーに飢えていた」ことがプラスに転じた。
　サッカーに思う存分打ち込める楽しさが、スポンジのような吸収力となった。「子供のころからお父さんに人の言うことを良く聞くように、しっかり教育されていたようです。学校では私のことも怖がっていたし、お父さんと同じ感覚でいたから良く聞いていたのかな」と山口氏は笑う。１度自分の中に取り入れ、必要なものとそうでないものを取捨選択ができる『頭の良さ』も優れていた。
　自分のスキルに満足することなく、南アフリカの舞台でもアンテナはさらに高く伸びるだろう。伸びしろに上限はない。【鎌田直秀】