2010年5月18日

＜駒野友一：取材後記＞
　駒野友一（２８＝磐田）の弟は、今も「兄ちゃん」の背中を追いかけるサッカー選手だった。弟祐輝さん（２７）は、関西の強豪阪南大から社会人関西１部リーグの三洋電機に入り、６年目を迎える。兵庫県の淡路島にある会社で、毎日夕方まで仕事してから練習に励んでいる。背番号は４。昨季は同リーグを制覇し全国大会に出場。あと１歩でＪ２の１つ下に位置するＪＦＬに昇格というところだった。
　ポジションはボランチで、体の線が太く力強い兄とは違い？　スリムでさわやかな印象だった。実は、兄が所属した広島ユースにも練習参加をしたこともあったという。当時まだ和歌山の中学２年。「ある程度やれた感触はあった」。しかし、父敏明さんに生前「お前は友一と違って体格がないから、広島に行くのはやめておけ」と言われ、それが最後の会話になったという。結局地元の高校に進学し「正直やりたい気持ちがあったけど、父は分かっていたのかもしれないですね」と、祐輝さんは思い出すように振り返った。
　先日の神戸戦（８日＝ホムスタ）では何年ぶりかの観戦に訪れていた。「明日の試合にいいイメージをつけようと思って」と、翌日に自身のリーグ戦を控えながら、ウォーミングアップから熱い視線を送った。試合は後半１４分、駒野の左足から弾丸ミドルシュートが放たれたが、わずかに左にそれてポストに直撃。「あと数センチ内側なら…」と悔やむ記者に、祐輝さんは「おれがきたから変なプレッシャーになったのかも」と、家族ならではの気づかいを見せていた。Ｗ杯本番では、世界中を驚かす駒野のゴールを見てみたい。【栗田成芳】