2010年4月06日

<石井義信・取材後記＞
　石井義信氏（７１）が振り返ったソウル五輪アジア最終予選の中国戦の敗戦は、成功例ではないだけに重みがあった。８７年１０月２６日、雨の国立競技場に当時の日本代表戦では珍しく、満員の観衆が詰め掛けた。２０年ぶりの五輪出場の期待は、失望に変わった。「負けたもんは何も言えない。どうぞ言ってくださいという感じだったかな」。敗戦後の批判も、石井氏はこのように受け止めたという。
　とめどなく続く言葉にサッカーへの情熱がほとばしった。約２時間の取材はあっという間に過ぎた。東京アドバイザーを務める石井氏は、岡田ジャパンの健闘を祈りつつ、南アフリカＷ杯後のＪリーグについても言及した。
　石井氏　これは城福監督も言っているが、代表が負けたら日本サッカーはダメというある種の流れがあるが、そうなってはいけない。代表がダメでもクラブがあるでしょ。首都のクラブであるＦＣ東京が、いいサッカーをして、Ｊリーグを盛り上げないといけない。
　もし、日本が南アフリカで３連敗して帰国すれば、国内のサッカー人気下降が懸念される。石井氏はそうさせてはいけないためにも、首都のチームである東京がＪリーグをけん引しなければならないと熱を込めて訴えた。
　Ｊリーグが開幕し、１７年目を迎えた。石井氏が代表監督を務めていたころと、サッカーを取り巻く環境は大きく変化した。人気も実力もマスコミの数も。だが、本当にサッカーというスポーツが文化として根付いているか。悲しいかな、南アフリカ大会で日本の優勝はあり得ない。どういう形であれ、負ける。もしかしたら３連敗かもしれない。その後、国内のサッカー熱がどうなるか。サッカーが文化として根付いたかどうかを計る尺度として、Ｗ杯後のＪリーグに注目したい。石井氏の取材を終え、そんなことを思った。【塩谷正人】