2010年3月18日

＜鈴木大地・取材後記＞
　８８年ソウル五輪男子１００メートル背泳ぎで金メダルを獲得した鈴木大地氏（４３）は「楽しみですね、Ｗ杯」と言った。順大水泳部監督、水連理事など水泳関係のほか、ＪＯＣアスリート委員、世界オリンピアン協会理事など、スポーツ全般に渡って活躍しているからこそ、サッカー界も気になる。

　「引退したのは、Ｗ杯のせいなんですよ」。金メダルをとった後、休養した。９２年バルセロナ五輪に向けて復帰を決意したものの、９０年Ｗ杯イタリア大会のテレビ中継にくぎ付けとなり、完全に生活リズムを崩したという。「もちろん、冗談ですけど。でも、サッカー関係の人には、よくそう言ってるんですよ」。現役時代と変わらない口調で「へへへへ」と笑った。

　北京五輪から帰国した飛行機で、日本サッカー協会の犬飼会長と隣の席になった。「会長の話はすごくポジティブだった。日本はやれるとか、行けるとか。いいですよね。トップがそういう気持ちを持っているサッカー界は、将来明るいと思いました」。

　頭の回転が速く、話はおもしろい。知識も豊富だ。ふてぶてしく、何でも隠さず言い切る姿勢から「生意気」「とっつきにくい」と評されたこともあったが、それが魅力なのだ。好きで興味もあるサッカーだからこそ、次々と言葉が出てきた。２人だけで長く話し込んだのは１０数年ぶりだったが、少しも変わっていなかった。相変わらず、その言葉には重みと、ウーンとうならせる含蓄があった。【荻島弘一】