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数字だけじゃない!受験だって「人と人」

2010年3月17日

<予備校・取材後記>
 鹿児島出身の私にとって、いわゆる大都市の予備校がどんなところなのか興味があった。案内されて足を踏み入れると、フロアを埋め尽くしたデスクの上には山積みの資料と電子機器。スタッフが電話を耳に当てながら、ペンを紙に走らせている。新聞社の雰囲気に似ているな、と感じた。

 出願率や合格率、出題傾向、そして生徒の学力の現状に、伸びしろはどうか。日々、刻々と変化する情報をタイムリーに入手し、受験生にフィードバックする作業。将来のある若者の人生を左右する戦いだけに、それに携わる者の責任も重い。城南予備校吉祥寺校教務課の沢村真子さん(28)は「私たちにとっては毎年のことでも、受験生にとっては一生に1度、初めてのこと。自分の経験と照らし合わせながら、一緒に戦っています」と話す。

 私が大学受験を経験したのは、今から17年ほど前。早朝の「0時限」から日が暮れる「8時限」まで校内で過ごしたものだ。今でこそ先生方の熱心な指導に感謝し、多くの友人たちと苦楽を共にした日々が楽しい思い出となっているが、勉強嫌いの私にとって当時、机に縛り付けられる状況は、苦痛以外の何ものでもなかった。それが、近年は「ゆとり教育」の一環からか、学校の時間割システムもずいぶんと変わり、それこそ大学のように単位制の学校も多いという。高校3年にもなると、受験科目以外には授業を受ける必要もなくなり、昼すぎには下校する生徒もいる。サボろうとすれば、いくらでもサボれるわけだ。

 沢村さん自身も1度、受験に失敗した経験がある。多くの高校生と同じように、受験を経ても、自分がどういう将来を歩もうとしているのか分からなかったという。浪人生活を終えて大学に進学した際、教育現場への関心が高まり「自分がそうだったように、不安や悩みを抱えた受験生を支えて上げたい」と予備校のチューターという職業にたどり着いた。

 「最近では、かつてほど学校内で進路指導に力を入れていないところが多いようです。予備校の門をたたく受験生の多くが、どうすれば大学を受験できるのか、どういう勉強をしたらいいのか、まったく分からず駆け込んできます。中には、欧州といえばアメリカのことだと思っていた生徒もいましたから。受験生の力になることで、自分がお世話になった方々への恩返しをしたかった」。沢村さんのもとには毎年、卒業生から感謝の思いがつづられた手紙が、何通も送られてくる。ハートやニコニコ顔の絵文字を駆使したメールではない。心がこもった、成長の筆跡とでも言うのだろうか。便せんに自筆で何枚も書かれたものもある。

 ひざを突き合わせ、何度も繰り返して話をする。毎日、毎日、涙で顔を腫らしていた若者が、人生と向き合い、葛藤(かっとう)しながら成長していく。世の中がどんなに便利になっても、「人と人」が真剣に向き合うことの大切さをあらためて考えさせられた。【山下健二郎】


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奇跡に挑む者たち
 日刊スポーツ紙面では「世界4強 岡田ジャパン 奇跡へ」を連載中です。「奇跡」をキーワードにいくつかのテーマに分け、現在は日本代表23選手のルーツを探る「奇跡に挑む者たち」を連載しています。ニッカンコムでは、各回の「取材後記」を掲載しています。紙面とあわせてお楽しみください。

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