ボロボロのカカ　読み甘かったドゥンガ

　ブラジルの「美しき司令塔」は、ボロボロだった。ブラジル代表のチームドクターを務めたホセ・ルイス・ルンコ医師は、今大会無得点に終わったMFカカについて「本当は大会に出られるコンディションではなかった」と明かした。同選手は、昨夏約６８００万ユーロ（当時レート：９２億円）でACミランからＲマドリードに移籍。Ｃ・ロナウドとともに「新銀河系軍団」の中枢として期待されたが、度重なる負傷に悩まされ、不完全燃焼のままシーズンを終えた。「Ｗ杯こそは」と気持ちを切り替えたが、開幕直前にも左太ももを故障。無理に間に合わせたが、結局実力を発揮することはできなかった。

　今大会のブラジルは「らしさ」を捨て、組織重視の戦術に徹した。だが、守るだけでは勝てない。パズルを完成させるには、ワンプレーで相手の守備をこじ開けられる「天才」が必要だった。しかし、ドゥンガ監督は守備の意識が高い選手を優先的に招集していた。ルンコ医師は「Ｗ杯でなければ確実に欠場させていた」と話したが、エースの強行出場の裏には、代替策を持たなかった指揮官の「読みの甘さ」があった。（春日洋平通信員）