2010年4月09日

＜取材後記・加茂周＞
　加茂更迭、岡田昇格。１３年前のことを加茂さんは今まで語らなかった。カザフスタンに引き分けた後、客席にいた心ないファンからつばが飛んできた。加茂さんは下を向いたまま無言で引き揚げ、その後、当時の日本協会・長沼会長から解任を言い渡された。更迭された経緯、その後の岡田監督との話など、これまでメディアに伝わってきたのは、日本協会や周囲からの証言で、加茂さんの口からではなかった。

　「当時のことはオレはあまりしゃべらなかったんだ。今もあまりしゃべる気にはならないけどね」と言いながらも、断片的に振り返ってくれた。アウェーのウズベキスタン戦の後、岡田監督は空港からタクシーを飛ばして、加茂さんが待っていた都内のホテルに駆けつけた。当時岡田監督はピンチヒッターとして１試合限定で引き受けていた。

　加茂　ホテルの部屋で１時間話したのかな。お前がやるんや。お前がやらにゃ、しょうがない。そう言ったよ。いろいろ考えていたんだろう、岡ちゃんの決断も割合早かった。彼に引き継いでもらって、オレの気持ちの上での混乱はなかった。

　「１時間しゃべっているのに、今の話だけなら５分で終わります」と聞くと「ウズベキスタン戦の細かい話とか、ここがダメでここがよくてみたいな話が主だったよ。岡田も引き分けたことで、次やってやろうという気持ちになっていたみたいだ。勝ってたら、そこで辞めていたかもしれないね」。

　「当時のことはあまりしゃべりたくない」と言っていた加茂さんだが、記者の突っ込みに、丁寧に答えてくれた。今思えば、もっともっと突っ込んで話を聞けばよかったと思う。「当時のことは…」と言いながらも、加茂さんはきちんとしゃべってくれたわけだし。記者としての未熟さを痛感する取材だった。【盧載鎭】