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泣き虫先生の涙、やっぱり熱かったです

2010年3月20日

〈山口良治・取材後記〉
やっぱり泣いていた。
 山口良治(67)先生にお会いしたのは、伏見工のグラウンドの片隅だった。目の前では近畿大会を控えた選手らが、タックルの練習を繰り返している。
 偶然にも私が生まれたのは1975年。先生が伏見工の監督に就任した年だ。もちろん泣き虫先生の伝説は「スクールウォーズ」のドラマでしか知らない。
 話を聞いているうちに、先生の目が充血してくる。最後にはぬれた目頭を、自分の手でぬぐっていた。

 これまで何百人ものスポーツに携わる方との出会いがあった。だが、こんな情熱の塊のような人を知らない。
 取材の中で、原稿に書ききれなかったエピソードがある。監督に就任する1年前、74年春に伏見工に赴任した。初めて学校を訪れた時のことを、今でも鮮明に覚えているという。先生の言葉で、紹介したい。
 山口先生 ラグビー部があるというのは聞いていたからね。「全日本の山口さんが伏見工に来てくれる」-。そういう大勢の生徒が、グラウンドに待っていてくれる。そう信じていたんや。学校までの道中。タクシーで橋を越えて、信号を曲がって、あと100メートルで着く。みんなが迎えてくれるんや。ドキドキしながら、ようやく到着した。すぐにグラウンドに行ったら、そしたら、まさか…誰もいなかった。(ラグビーの)ゴールポストもない。オレはこの学校に何しに来たんや? って。寂しくなったな。
 先生にとっての初めて味わった挫折だったのだろう。今だから言えることだろうが、その出来事こそが情熱を生み出す源になった。
 
 取材が一段落すると、山口先生に「メシでも食いに行こう」と誘われた。向かったのは千本鳥居で有名な、伏見稲荷大社近くの食堂だった。最初に出てきたのはスズメの丸焼き。先生は「ウマイ、ウマイ」と言いながらボリボリと食べ始めた。形はスズメそのまま。目玉がギョロリとこちらを向いている。さすがに参った…。でも「食べられません」とは言えない。目をつぶって一気に食べきると、今度は社の方を指さしながら、また話し始めた。
 山口先生 この神社でケンカする生徒がいてな。何度もこの坂を登って、生徒を探しに行ったもんや。
 伏見工ラグビー部を支え続け、今年で35年になる。髪は若干薄くなり、シワの数も増えた。それでも情熱だけは、衰えを知らない。【益子浩一】


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 日刊スポーツ紙面では「世界4強 岡田ジャパン 奇跡へ」を連載中です。「奇跡」をキーワードにいくつかのテーマに分け、現在は日本代表23選手のルーツを探る「奇跡に挑む者たち」を連載しています。ニッカンコムでは、各回の「取材後記」を掲載しています。紙面とあわせてお楽しみください。

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