【Sawbona! W杯】準高地を侮るな!リスクと対策に迫る
2010年3月23日
準高地を侮るな! 「世界4強」を目指す岡田ジャパンは、強豪3カ国だけではなく標高との戦いにも挑む。1次リーグの3会場のうち2会場は標高1000~1500メートルの「準高地」に位置。標高2000メートルを超える「高地」ではないものの、低酸素状態による身体的な影響の恐れが十分にある。油断大敵の準高地対策のため、専門家が3つの提言。元五輪選手の体験談も含め、準高地のリスクと対策に迫った。【構成・佐藤隆志、菅家大輔】
カメルーン、オランダ、デンマークという強豪3カ国との対戦の前に、岡田ジャパンの「敵」となるのが標高だ。第1戦のブルームフォンテーンで1400メートル、第3戦のルステンブルクは1500メートル。ずばぬけた高さではないが、この「準高地」がくせ者だ。
標高が上がり、酸素が薄い低圧低酸素状態では、持久力の低下が見受けられてくる。国立スポーツ科学センター(JISS)の鈴木康弘研究員(35)は「研究レベルでは準高地と言われる1000~1500メートルの間でも最大酸素摂取量が7~9%低下するとのデータもある。個人差はあるが、持久力の低下が現れる可能性はある」と証言する。
決して2000メートル超の「高地」ではない。だが、同研究員は「高地に弱い人は標高560メートルで最大酸素摂取量が低下する場合がある。『準高地だから大丈夫』ではリスクが高い。2000メートルで競技するくらいのつもりで準備をしたほうがいいと思う」と指摘する。
それでは、どのような対策を取ればいいのか? 第1の鍵は、5月下旬から始まる標高1800メートルのスイス・ザースフェー合宿だ。
◆提言1 東海大スポーツ医科学研究所の寺尾保所長(59) 高地に適応しやすいタイプとしにくいタイプがいる。スイス合宿前に選手の高地順化の能力を計測し、個々のタイプを把握すればより効果的な練習を積める。また、標高の高いスイスでいきなり練習するとオーバートレーニングの症状が出る可能性がある。事前に日本の施設で低酸素状態に慣れるのがいい。
◆提言2 鈴木研究員 23人の代表選手個々の対策を取るのが理想ですが、現実的に難しい。順化能力の高い選手と低い選手をグループ分けし、能力の低い選手は標高のやや低い場所で順化させた後にザースフェーに上げるというのも手だと思う。
日本はスイス合宿後の6月7日に標高0メートルの南アフリカの拠点ジョージに移動。大会開幕後は試合前日か前々日に会場がある都市に入り、試合後ジョージに戻るという移動を繰り返す予定で、標高0メートルと準高地を行き来することになる。
◆提言3 鈴木研究員 疲労回復のため高地から平地に下りるのもいいが、本当なら標高を維持したまま試合に臨む方がいい。平地に戻ると高地に順化した体が元に戻ってしまう。移動に伴い環境が変わることはリスクがある。ジョージ滞在時に低酸素室などを使い、いかに高地に順化した状態を維持するかも大事。
準高地でも体質により、頻尿による脱水や貧血症状、低酸素状態で頭痛や寝苦しさ、乾燥によるのどの渇きなどに見舞われる。それらの最大の解決策は「時間をかけて慣れること」だという。「高地ではスピードがあり、全身持久力の高い選手ほどパフォーマンスが落ちる傾向があると言える。走れない上に、頭に酸素がいかないと判断ミスも出る」と寺尾所長。「世界4強」の奇跡を起こすために、まずはピッチに立つ前の戦いに勝つ必要がある。
トリノ五輪スピードSスケート1500メートル代表の今井裕介 トリノ五輪スピードスケート男子1500メートル代表で、同五輪後に競輪に転向した今井裕介(32)。「高速リンク」がある標高1100メートルのカナダ・カルガリーなど、準高地での豊富な競技経験から高地順化への「時間」の必要性を説いた。
今井 僕は高地が苦手だった。準高地でも乾燥でせきが止まらず、頭痛や貧血の症状も出た。筋力の数値も軒並み下がった。個人差があって、影響のない選手がほとんどでしたけど…。
01年に1500メートルで当時世界歴代2位の記録を出した時も、準高地を2週間転戦したことが生きた。
◆1戦目 W杯最終戦(01年3月2~4日、カルガリー) 1分48秒74
◆2戦目 世界距離別選手権(同9~11日、米ソルトレークシティー、標高1400メートル) 1分46秒94
◆3戦目 五輪オーバルフィナーレ(同15~18日、カルガリー) 当時世界歴代2位の1分45秒49
今井 1戦目の体調は最悪。でも転戦したことで、3戦目は肉体的な不安をさほど感じなかった。高地が苦手な僕は、時間をかけて順応させるしかなかった。
日本男子が苦戦する1500メートルで世界に迫った男は終始「時間」を強調した。
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