【Sawbona! W杯】ホンジュラス 出場を機に民主的政権誕生
2010年3月16日
W杯全出場国を実際に訪ね歩いている村上敦伺さん(32)四方健太郎さん(30)の2人組による「出場国生リポート」。先週の「欧州・アフリカ編」に続き、今回は後半「南米・北中米カリブ海・アジア・オセアニア編」をお送りします。世界にはサッカーをめぐって戦争が起き、サッカーをきっかけに平和が訪れる国もある。各国の文化的・政治的背景を知れば、W杯がさらに深く楽しめる。そんな2人の思いを届けます。
村上 みなさん、1週間ぶりです。今週はロンドンから、W杯出場国の「生リポート」をお送りします。
四方 今回のメーンテーマは、先週まで回っていた米大陸です。印象に残ったのはどこ?
村上 断然カナダだね。バンクーバー五輪のカーリングを観戦したけど、スタンドからチーム青森に声援を送ったら、手を振ってもらえた。うれしかったなぁ。
四方 サッカーじゃないし、カナダはW杯出ないよ! 僕はホンジュラスが印象に残ったよ。
村上 かつてはW杯予選の結果をめぐって、1969年に隣国エルサルバドルと「サッカー戦争」をした国だったよね。
四方 今回は逆に、サッカーが国に平和をもたらしていた。昨年6月に軍事クーデターが起きて、政情不安が伝えられていたけど、実際入国したら、国民に動揺は感じなかった。
村上 確かに首都のテグシガルパも、治安が乱れている様子はなかった。なんでだろ?
四方 彼らは去年10月、北中米カリブ海予選最終節で因縁のエルサルバドルと対戦したんだ。それまでは国民党と自由党が激しく対立していて、選挙もままならない状況だったみたい。でも大事な一戦を前に「内輪もめしている場合じゃない」と両党が手打ちして、手を携えて代表チームを応援したらしいんだ。
村上 本当に? なんか映画みたいな話だね!
四方 チームはアウェーで勝った上に、W杯出場圏の3位を争うコスタリカが、米戦のロスタイムに失点しドローに終わった。それで劇的に7大会ぶりの本大会出場が決まったんだ。翌日は急きょ休日になって、国中お祭り騒ぎ。その勢いで、11月に民主的な選挙まで行われて、無事に新政権が生まれたらしい。
村上 じゃ、本大会でも相当がんばらないと、平和が続かないのかもね。1次リーグでは優勝候補のスペインと同組だけど、気後れしてる場合じゃない。
四方 モチベーションじゃ負けないでしょ。国の平和を背負うホンジュラスの大番狂わせに、僕らも期待したいと思います。
◆サッカー戦争 ホンジュラスは70年W杯出場を懸け、69年6月に隣国エルサルバドルと北中米予選2回戦で対戦。ホームアンドアウェーで1勝1敗と決着つかず。エルサルバドルから国交断絶をにおわされる異様な緊張感の中、第3戦に臨んだ。健闘及ばず、2-3で敗れて予選敗退が決定。敗戦直後に、ホンジュラス政府は断交を宣言した。7月10日にエルサルバドルの侵攻を受けた。同29日には終戦したが、エルサルバドル製品のボイコットを続行。80年にようやく平和条約が結ばれた。
◆ホンジュラス共和国 中米に位置する、人口約800万人の国。首都テグシガルパ。1502年にコロンブスが4度目の航海で発見。直後にスペインに征服された。1838年に独立。19世紀後半からバナナ農園が発達。20世紀初頭には、世界の3分の1の生産量を誇り「バナナ共和国」と呼ばれるまでに。第2次大戦以降、軍事政権が相次いで成立するなど政情は不安定。09年6月にも、セラヤ大統領が終身大統領就任をもくろんだことをきっかけに、軍事クーデターが起きたばかり。同11月には大統領選挙が行われ、10年1月にはロボ現大統領が就任した。
パラグアイ
南米予選ではブラジル、アルゼンチンなど強豪と常に互角の戦い。本大会でも98年決勝トーナメント1回戦で、優勝したフランスと延長戦にもつれ込む大熱戦を演じました。そんな勝負強さの裏には、国民の熱狂的なサポートが。先日、代表FWカバナスがメキシコで頭部に銃弾を受けた際には、数万人のサポーターが国立スタジアムに集結し、復活を祈りました。さらに僕たちが驚いたのは、有力な携帯電話会社が通話の呼び出し音として、カバナスの応援歌を採用していたこと。「大統領選挙より代表戦」という国民の愛情に支えられ、今大会もパラグアイは台風の目になりそうです。(四方)
ニュージーランド
僕たち2人が、旅の目的自体に「ダメだし」された唯一の国でした。7大会28年ぶり2回目の出場。国中がW杯ムード一色かと思いきや、街中に大会エンブレムすら見かけない冷めっぷり。大型スポーツ用品店をのぞいても、見つけた関連グッズは代表関連デザインTシャツ1着のみでした。それもそのはず、国民は11年に自国開催される、ラグビーW杯に夢中。ある中年男性に32カ国を回っているという話をすると「そんなにサッカーを追っても、面白いことはないだろうに。悪いことは言わない。ラグビーW杯出場国を回りなさい」と諭されてしまいました。考えようによっては、32カ国中最も国民からのプレッシャーがない国だけに、もしかしたらのびのびプレーで快進撃も?(村上)
北朝鮮
中国から陸路で9時間かけて訪問しました。地下鉄の駅構内には、サッカーの試合を取り上げる新聞が掲出されるなど、サッカー人気は高い様子でした。さらにちょうどアリラン祭という大きなお祭りがありましたが、ここで彼らの「組織力」を見せつけられました。1万人規模のマスゲームは、一糸乱れぬ統率が取られた、非常に見事なもの。現地の方によれば「人が入れ替わりながらやっているので、実際には10万人くらいが同時に動いている」とのことでした。66年W杯では、イタリアを破って8強に入ったことも。今大会でも規律が保たれたプレーで、1次リーグ同組に入ったブラジル、コートジボワール、ポルトガルの列強を苦しめるかもしれません。(村上)
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