Sawbona（こんにちは）南アフリカ

【南アフリカNOW】「おくりびと」余韻浸る観客

2009年11月17日

　日本映画「おくりびと」が南アフリカでも公開された。鑑賞に出かけると、観客のほとんどが年配者。あの世への旅立ちを前に遺体を生前の姿に近づける納棺師の物語は、英語で「Ｄｅｐａｒｔｕｒｅｓ」（旅立ち）と訳された。この国の人たちは映画が終わるとすぐに席を立つが、映画の余韻に浸るかのようにエンディング曲まで聞き入る多くの観客がいた。

　南アでは葬儀の際に、土葬か火葬かを選べる。インド系住民は火葬だが、通常は土葬だ。以前に、旧黒人居住区ソウェトに住む女性の葬儀に参列したことがある。本人が書き残した「私の葬儀進行」という紙にはハトのさし絵があり、誕生から死までの経歴が記されていた。親族は参列者に肉をふるまうため、牛１頭を殺し、その牛革は棺にかける。３メートルほど掘られた土の中に棺を置き、土とコンクリートで埋めた。

　驚いたのは、参列した女性たちの明るい色柄物のドレス姿だった。黒装束の中で華やかな服は目を引いた。さらに悲しみに暮れる遺族の向かいの家では、音楽をがんがんにかけ、パーティーを楽しんでいた。それでも遺族は「ここでは珍しいことではない」と話した。（エリス・マシャカ通信員）