Sawbona（こんにちは）南アフリカ

【Sawbona! W杯】小国バーレーン、夜明けまであと１勝

2009年11月10日

わずか75万人、最少人口Ｗ杯へ

　Ｗ杯史上、最も人口が少ない出場国（地域）へ！　バーレーン代表はアウェーで行われる１１月１４日のＷ杯予選大陸間プレーオフ（ＰＯ）、ニュージーランド戦第２戦に向け、現在シドニーで事前合宿を行っている。アテネ五輪予選で、アジア杯で、そしてＷ杯予選で日本代表を苦しめ続けてきた「バーレーン黄金世代」は、国籍変更選手も加えて、さらに戦力アップ。２億円の強化費と「規格外」のＷ杯出場ボーナスも注入する。約７５万人の国民の悲願達成はなるか。

　最大にして、最後かもしれないチャンスに、全力を注ぐ。バーレーン代表は６日にトーゴと親善試合を行い、５－１と圧勝。弾みをつけて、チャーター便に飛び乗った。９日からはシドニー合宿を開始。時差と気候に慣れた上で、１２日に敵地ニュージーランドに乗り込む。１日の国内合宿開始から、１４日の決戦までに半月を費やす万全の準備だ。

　地球半周の長距離チャーター便、長期合宿、トーゴ代表との緊急強化試合－。最後の決戦のために国が投じた費用は２億円にも達した。それほど「ドリームチーム」に向けられる、国民の期待は大きい。チームの中核は０４年のアテネ五輪世代。ＦＷのＡ・フバイルらを擁し、同五輪予選ではホームで１７年間負けたことがないＵ－２３日本代表にも、敵地で１－０と勝った。

　育成システム、国内リーグともに質素で、お世辞にも選手が育つ土壌があったとは言えない。その証拠に０３年まではＷ杯はもちろん、アジア杯本大会にも、たった１度しか出場できなかった。そんな人口約７５万人の小国代表に、１０年に１人の才能が何人もそろったのは、まさに奇跡。得がたい好機に、協会はさらなる補強を施した。

　まずは国籍変更選手の代表招集を解禁。スイス・ザマックス所属のチャド出身ＭＦオマルや、ベルギー・ムスクロン所属のナイジェリア出身ＦＷジョンらが、新たに加入した。監督にも中東で実績を残す、チェコの名将マチャラを招いた。同国史上最強の軍団は、０８年以降、Ｗ杯予選とアジア杯予選で岡田ジャパンを２度も撃破している。

　ペルシャ湾岸諸国も全力でバーレーンを応援する。ニュージーランド戦はアラブ人にとって「対白人」の大決戦。１０月の大陸間ＰＯ第１戦では、首都マナマにクウェートなど各地から、大応援団が集まった。カタールやＵＡＥ、サウジアラビアのテレビ局も、バーレーン応援特番を放送した。

　にんじん作戦にも、余念はない。前回のＷ杯予選大陸間プレーオフで、トリニダード・トバゴに敗れた時でさえ、選手たちには絶望からの再起をうながす「残念料」として、なんと豪邸１軒ずつが国から贈られた。今回、同国協会は「Ｗ杯出場ボーナスはあまりに高価すぎるので、選手へのプレッシャーになりかねない。だから勝つまでヒミツ」とさらに豪華なごほうびの存在をほのめかしている。

　第２戦を前に、すでにＷ杯応援ツアーも発売されている。Ａ・フバイルら大けがで長期離脱中の選手も、本大会での起用を見据えて、国の負担でドイツで治療中。中東の小国の見果てぬ夢は、今度こそ正夢になるのだろうか。（海島健通信員）

名将マチャラにとっても最大チャンス

　バーレーンを率いるのは「中東の魔術師」ミラン・マチャラ監督（６６）だ。大一番を前に「国民みんなが夢見ているように、私にとっても夢のＷ杯」と意気込んでいる。これまでクウェート、サウジアラビア、オマーン、バーレーン代表監督を歴任。日本、韓国、サウジの「アジア３強」すべてから白星を挙げた、唯一の監督でもある。

　日本との縁もある。９６年アジア杯準々決勝では、アマ選手ばかりのクウェートを率いて日本に勝ち、連覇を阻止。逆にサウジを率いた００年アジア杯では１－４と敗れ、直後に解任の憂き目を見た。オマーン代表時代には０６年Ｗ杯予選、アジア杯で計３度対戦。いずれも０－１で敗れたが、堅守と鋭いカウンター攻撃で、ジーコジャパンを苦しめ続けた。

　小国の指揮が多いため、これまではＷ杯本大会は縁遠かった。百戦錬磨の策士にとっても、人生最大のチャンスだ。

　◆バーレーンはアウェーに強い　０５年１０月のＷ杯アジア予選ＰＯのウズベキスタン戦では、ホームで０－０と引き分けたが、敵地で１－１で引き分け、アウェーゴール差で突破を決めた。同１１月の大陸間ＰＯではトリニダード・トバゴに２戦合計２－１で敗れたが、アウェーではゴールを奪い、１－１と引き分けている。今回のアジア予選ＰＯサウジアラビア戦でもホームでの初戦は０－０。２戦目の後半ロスタイムに勝ち越し弾を許したが、終了直前のプレーで奇跡の同点弾。またしてもアウェーゴール差で突破を果たした。