【Sawbona! W杯】各大陸予選の厳選こぼれ話を紹介
2009年10月20日
32チーム中23チーム決定
真剣勝負の分だけ、悲喜こもごものドラマも生まれる。10日、14日には欧州、北中米カリブ海、南米地区でW杯予選の全日程が終了。アフリカ地区の最終節と、欧州と大陸間のプレーオフを残すのみとなった。この2日間で多くの国が本大会出場決定の歓喜に沸き、多くの国が敗退の涙にくれた。その中で、あまり大きく取り上げられなかったW杯予選でのショートストーリーを、日刊スポーツのサッカー取材班が厳選してお送りします。
喜
最後まで全力を尽くすブルガリアFWディミタル・ベルバトフ主将(28)の姿に神様が最高のプレゼントを与えた。W杯出場を逃し、消化試合となった14日のグルジア戦でハットトリックを達成した数時間後の15日早朝、恋人のエレーナさんがソフィア市内で第1子の女の子・デアちゃんを出産した。個人サイトには「安産で母子ともに健康」とのコメントが躍った。
何の目標もないグルジア戦。空席の目立つ会場で、ベルバトフは手を抜くことなく最高のプレーをみせた。6-2と圧勝後に「チームには6点取っても解決できない数々の問題がある」と話し、チーム再建への決意を感じさせた。W杯切符は逃したが、子供の誕生で困難な仕事に立ち向かうための大きな励みを得た。
怒
イタリアのリッピ監督が、公の場で個人的な感情を爆発させてしまった。W杯出場を決め、消化試合となった14日のキプロス戦。格下相手に2点リードされると、観客は大ブーイング。そして昨年の欧州選手権を最後に代表から外れているFWカッサーノ(サンプドリア)の名前を呼び続けた。試合はジラルディーノのハットトリックで3-2の逆転勝ち。しかし、試合直後のテレビインタビューで同監督は「今日の観客は我々へのリスペクトがない。どんな選手の名前でもコールするがいい。私は納得がいかなければ、絶対に招集しないから」と激怒した。これまで世論の待望論を無視してきた指揮官だが、「犬猿の仲」を自ら公表してしまう形に…。(波平千種通信員)
哀
クロアチアは14日の予選最終節カザフスタン戦を前に空中分解していた。MFモドリッチら主力の大半が負傷で離脱。苦しい状況を打開すべく、8日からの事前合宿中に決起集会を開いた。だが酒を飲みすぎた選手同士が、殴りあい寸前の大ゲンカを始めてしまった。自国メディアの厳しい批判を受け、ビリッチ監督は数選手を代表から追放するしかなかった。
しかも試合がなかった10日に、首位イングランドに勝ったウクライナに逆転され、プレーオフ圏外の3位に転落。予選敗退が事実上決まってしまった。ビリッチ監督は緊急会見を開き「ウクライナにはおめでとうというしかない」と最終節を前に早くも敗北宣言。同国協会にも辞意を伝えた。
楽
スペインが同国史上初めて予選を全勝(10戦)で突破した。最終ボスニア戦(6-2)は2トップのビジャ、F・トーレスを欠場させたが、初先発のFWネグレド(Rマドリード)が2得点2アシスト。あらためて選手層の厚さを見せつけた。ポルトガル誌「Futebol finance」が発表した各国代表の総価値(25選手)ランキングでは、ブラジルの4億5000万ユーロ(約585億円)を上回る5億1000万ユーロ(約663億円)でトップ。早くもW杯優勝候補一番手の声さえ挙がるが、デルボスケ監督は「私は楽観主義だけど用心深い。優勝候補というより、優勝への強い思いがあるチームなんだ」。指揮官もまんざらでもないようで。(山本孔一通信員)
悲
ワシントンの悲劇だ。14日の米国戦後半ロスタイム5分。2-1とリードするコスタリカは、W杯本大会出場の北中米カリブ海地区3位確保まで、あと10秒ほどに迫っていた。だがラストプレーで、相手にCKからヘディング弾を許し、まさかの同点。この時点でチームは4位に転落し、選手たちは涙とともにピッチに崩れ落ちた。
ウルグアイとの大陸間プレーオフが、まだ残っている。だがあまりのショックに、試合後には大半の選手が無言で取材エリアを通り抜けた。唯一口を開いたベテランFWフォンセカは一言「泣きたい…」。シモンエス監督も「ウルグアイについて語ることよりも、まずは選手たちを立ち直らせないと」と言うほどだった。
笑
そのサービス、プライスレス? スロベニアのボルト・パホル首相は、自国のW杯予選プレーオフ進出を受け、異例の声明を行った。
パホル首相 我々はセカンドチャンスを得ることができた。そして選手たちは、チャンスを生かすに違いない。そのとき私は、彼らのスパイクを磨いてあげようと思う。
一国のトップの申し出は、選手や関係者を恐縮させるのに十分なもの。しかも必要なのは、首相が余計なプライドを捨てることと、磨き布1枚だけだ。財布がまったく傷まない「にんじん作戦」で、都合よくチームを02年大会以来2度目のW杯に導くことができるか。
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