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【Sawbona! W杯】呪術は敵か味方か支配者か

2009年10月16日

Cロナの足真っ二つ!?

 W杯予選が大詰めを迎え、呪術(じゅじゅつ)にまつわる話題があちこちで聞こえてくる。世界のスーパースターに及ぶ「魔の手」、チームを支える「神の手」、そして勝負を左右する「見えざる手」。呪術とは、サッカーの敵か、味方か、それともサッカーを支配するものなのか。来年の本大会が行われる南アフリカは土着の宗教「ブードゥー」が盛ん。信じる者が救われるのか-。(春日洋平、山本孔一通信員)

 呪術はサッカーの敵なのか-。ある呪術師が、ポルトガルのC・ロナウドが重傷を負うよう祈とうしたことが分かった。9月29日付のスペイン紙で「彼がプロサッカー選手であるように、私もプロの呪術師として依頼されたからには全力を尽くす」と宣戦布告。翌30日。C・ロナウドは欧州CLのマルセイユ戦でスライディングタックルを浴び、右足首の靱帯(じんたい)を損傷。今月4日のセビリア戦を欠場し、チームも今季初黒星。復帰した10日のハンガリー戦でまたも同じ個所を痛め、欧州予選最終マルタ戦は欠場する。

 スペイン国内に衝撃が走る中、6日付のスペイン紙で「謎の呪術師」が自らの素性を明かした。名前はペペ、57歳。スペイン・マラガ近郊ビトリアに2カ月前から在住し、呪術のキャリアは22年に及ぶという。

 ペペ 誰もが知っているスペイン女性から復讐(ふくしゅう)のため、ロナウドをガラスのエースにするようにと依頼された。報酬は3万ユーロ(約390万円)で、前金1万5000ユーロ、成功報酬として残りの1万5000ユーロを受け取る。女性は家族とともに心身を痛めており、成功した場合は2倍のギャラがもらえる。

 呪(のろ)いのステップは3段階。(1)死人の灰が詰まったつぼの中に、C・ロナウドの写真を入れる。(2)黒いろうそくで人形をつくり、同選手の写真を張る。こめかみ、胸、ひざ、足首に針を打ち付ける。日が替わった時に墓場に人形を埋める。(3)1本の麻ひもをしっかり結び、7個所の結び目を入れる。結び目は人体の部位を表しており、1つ目は足首、2つ目はひざ、そして7つ目が首になる。野原に穴を掘り、7個所の結び目を付けた麻ひも、墓場の土、尿を入れ、馬フンで穴を埋める。最後は土をかけて普通の状態に整える。

 恐怖におののくC・ロナウドは、親友に「いつか自分の足が2つに折られる日がくるかも…」と漏らした。W杯出場をかけた大事な試合が続く中で、肉体よりも精神的ダメージを負った。

ゴール守った!? 鞄の猫

 呪術はサッカーの味方なのか-。アフリカ諸国にとって「神霊」は大事な心のよりどころ。W杯本大会となれば、呪術師を帯同させるチームも珍しくない。2大会連続の出場を狙うコートジボワールMFゾコラは、アフリカ勢の「神頼み」についてこう証言した。

 ゾコラ 神秘の力に対する信仰は、代表戦でも用いられる。例えば、土を入れた小さな袋を「お守り」として毎試合持って行く選手は多い。もちろん試合前や試合中にさえ黒魔術を使ったりもする。試合に勝てば、とても幸運な気持ちになる。それだけでも十分な精神的な効果がある。

 また、カメルーンFWエトーは先月、アフリカ予選でも呪術が普通に使われている現状を告白した。

 エトー ある試合で、相手チームがいっこうに更衣室に入ろうとしなかったことを覚えている。彼らは呪術をつかって更衣室に「負の力」を送り込んだと抗議した。その後、我々も自分たちの更衣室に入ることを避け、呪術師が2つの更衣室を清めるまで待った。

 来年のW杯を控える南アフリカでは、呪術は生活と切り離せない伝統文化だ。元代表主将のラデベ氏はキリスト教徒でありながら「呪術や黒魔術の儀式は我々の文化の一部。その効果を軽視することはできない」と言う。

 ラデベ氏の代表でのチームメートだったGKバロイは、所属クラブ(カイザー・チーフス)で出場する時は必ず黒いバッグをゴールポスト周辺に置いた。その防御率から「無敵のスパイダーマン」と呼ばれたが、ある時そのバッグの中から猫が出てきて、呪術のためのものだったことがばれてしまった。バロイはその時から調子を崩し、失点数が大幅に増えたという。呪術師によると「どういった呪術を使用しているかがばれてしまった場合、その効果が消えてしまう」そうだ。

ルーニー弾をアシスト!?

 呪術はサッカーを支配できるのか-。9月9日のクロアチア戦でW杯出場を決めたイングランドにも、呪術がかかわっていた。試合を前に、南アフリカの「ウィッチ・ドクター(呪術医)」が「ルーニーの決勝ゴール」を予言していた。

 英紙サンは、クロアチア戦に向けて南アに記者を派遣し、呪術医マリー・ムプトルさん(42)の「お告げ」を試合当日の紙面で掲載した。「先祖と会話ができる」というマリーさんは、おわんに入れた子牛の骨や貝殻などをイングランドのユニホームの上にばらまき、「イングランドの2-1勝利」を予言した。

 その後「勝負を決められる選手の名前を紙に書け」と命じられたリポーターが「ウェイン・ルーニー」とつづると、マリーさんは「この者に力を授けるよう先祖に働きかける。決勝点の得点者はルーニーだ」と予言した。実際は「5-1」で、ルーニーは決勝弾ではなく「ラストゴール」だったので多少のズレはある。

 しかし、相手GKの信じられないキックミスから得点チャンスが生まれたことは紛れもない。特別な力が作用したかのようなラッキーゴールに、ルーニーも半信半疑の笑みを浮かべた。


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