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【Sawbona! W杯】イングランド、史上最大のニンジン作戦

2009年10月07日

計22億円

 44年ぶりのW杯優勝へ、早くもイングランドの目の色が変わった。近年は毎回のように「優勝候補」と目されながら、ここ一番で勝負弱さを露呈し、世界タイトルを逃してきた。そこでイングランド協会(FA)は、66年大会以来となる悲願の世界一奪取へ、金に糸目をつけず、思い切ったボーナス作戦を断行。本大会優勝なら、予選含めチームに総額1500万 ポンド (約22億円)にも達する巨額ボーナスを支給するという。(春日洋平通信員)
※1ポンド=147円、1ユーロ=130円で換算

 イングランドが世界最大級の「にんじん」をぶら下げ、母国の権威を取り戻そうと躍起だ。イングランド協会は、欧州予選8連勝でW杯出場を決めたファビオ・カペッロ監督(63)に対し、100万ポンド(約1億5000万円)のボーナスを支給した。優勝すれば、さらに100万ポンド。合計200万ポンド(約3億円)という世界最大級のボーナスを提示し、66年以来の国際タイトル獲得を狙っている。

 08年の欧州選手権出場を逃したサッカー大国は、復興への第1歩として07年12月にイタリア人のカペッロ氏を監督に招いた。前回W杯を率いたエリクソン監督以来、同代表史上2人目となる外国人を登用した。しかも年俸は史上最高となる600万ポンド(約9億円、手取り480万ポンド=約7億円)。基本給だけでも世界最高クラスだが、FAは契約交渉の際に「本大会の出場権獲得、その後の各ステージ進出につきボーナスを支給する」との条件を提示した。

 これに対しカペッロ監督は、優勝を目指すならステージ別のボーナスは不必要と申し出を断り、最終的に「W杯本大会で100万ポンド、優勝すればさらに100万ポンド」という付帯条項を契約書に明記させた。つまり世界一なら同監督の来年の収入(年俸+ボーナス)は「最低800万ポンド(約12億円)」だ。それでもFAのある役員は「(ボーナスが)200万ポンドと言うと途方もない額に聞こえるが、W杯優勝の利益を考えれば法外な額ではない」とイタリア人指揮官を擁護した。

 巨額ボーナスは監督だけではない。選手に対し、FAは予選で最も出場回数が多かった主力選手16人に「1人30万ポンド(約4400万円)」の出来高ボーナスを支払った。また、主将のテリー率いる選手団は近々、来年の本大会に向けてFAと優勝報酬についての交渉を開始するという。02年大会は1人25万ポンド、前回大会は30万ポンドと設定されていたため、英各紙は今回は「35万ポンド(約5145万円)」になると予測する。

 招集メンバー23人の合計なら「805万ポンド(約12億円)」。しかもW杯に優勝した場合、FAは予選と本大会を合わせて「約1500万ポンド(約22億円)」もの巨額ボーナスを支払うことになる。しかし英デーリー・テレグラフなどによると、W杯出場における英国での経済効果は推定10億ポンド(約1470億円)。世界一となれば賞金やスポンサーからの副収入を合わせ、FAに「1億ポンド(約147億円)」が流れ込むという。そう考えれば、1500万ポンドという金額は何らおかしな数字ではない。

 イングランド代表の選手組合は、07年6月に「チーム・イングランド・フットボーラーズ・チャリティー」を設立。南ア大会終了時までに「100万ポンドの寄付金」を募ることを目標にしている。FAは各代表戦のベンチ入り選手に「勝利給1500ポンド(約22万円)、引き分け1000ポンド(約15万円)、負け750ポンド(約11万円)」を支払っているが、同チャリティーの発足以来、選手たちはその「出場給」をすべて寄付している。そのため、予選・本大会を通じて選手が受け取れるのは「ボーナス」だけだ。

 W杯の優勝はお金で買えるのか? 結果はフタを開けてみるまで分からないが、史上最大の「ニンジン作戦」でチームの鼻息が荒くなったことは確か。「母国」の威信を取り戻すため、今回のイングランドは本気も本気のようだ。

 ◆日本では 本大会前の日本協会常務理事会でボーナス規定を定める。06年ドイツ大会の場合、勝利=100万円、引き分け=50万円、1次リーグ突破=500万円、8強=1000万円、4強=1500万円、準優勝=2000万円、優勝=3000万円など詳細に金額設定されていた。ボーナスは全選手とコーチ陣に支払われるもので、監督は特別ボーナスの別契約を結ぶ。

 日本協会幹部は「今回もドイツ大会の時と大きく変わらないはず」と話す。岡田ジャパンは、世界4強を目標にしており、4強に進んだ場合、1500万円のボーナスに勝利給を合わせて約2000万円のボーナスを手にすることができる。決勝トーナメントに進出した地元開催の02年大会では、勝利給を含め当初予定の規定分750万円に、日本中を感動させた活躍をたたえ、特別に250万円を上乗せした1000万円が支給された。


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