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【Sawbona! W杯】ニッカン夏季講習・歴史

2009年8月31日

ニッカン夏季講習4時限目・歴史

 「ニッカン夏期講習」の4時限目は歴史です。W杯は1930年にウルグアイで第1回大会が始まり、来年の南ア大会で19回目を迎える。今も昔も、選手の必需品と言えばサッカーシューズ。54年のスイス大会以降、半世紀以上にわたって選手の足をサポートする「アディダス」は、歴代のW杯を見守り続けてきた。そこでアディダス・ジャパンの森下尚紀氏(37)、大山永路氏(31)に、シューズの歴史と進化について聞いてみた。(取材・佐藤隆志)

 54年のW杯決勝。西ドイツは「マジック・マジャール(魔法のハンガリー)」と呼ばれた無敵ハンガリーに挑んだ。後半39分に勝ち越しゴールを奪い、逆転勝ちで、下馬評を覆す大金星を挙げた。

 「ベルンの奇跡」として映画化された試合には隠れた物語がある。西ドイツのベンチには用具係として、アディダス創始者アドルフ・ダスラー氏が座っていた。後半から突然降り出した雨。ぬかるんだピッチに相手が苦しむ中、長いスタッド(靴底のビョウ)を取り付けて戦った西ドイツはピッチに足を取られることはなかった。「奇跡」の裏には、シューズの機能性の違いという「必然」があった。

 靴が変わればプレーも変わる。アディダス・ジャパンの森下氏、大山氏はダスラー氏(愛称アディー)の理念を胸に、シューズ開発に携わっている。

 森下氏 1948年のアディダス設立と同時に、トレードマークになる3本線が登場しました。これはもともとデザインでなく、シューズの皮が伸びるのを防ぐ「伸び止め」という立派な機能だったのです。アディーは4年に1度のW杯を高度な実験開発の場と考え、製品の性能テスト→選手へのフィードバック→改良・開発を続け、スパイクを進化させてきたのです。

 70年代以降、変化はまずアウトソール(靴底)に及んだ。柔軟性と耐久性に優れるポリウレタン(ウレタン樹脂)の使用で軽量化に成功し、78年には2種類の異素材を使った「ワールドカップ78」も登場。続いて82年にはグラスファイバーの導入で、耐久性とソールの屈曲性が格段アップ。森下氏は「フィット感が高まり、それまで難しかった足裏のボールコントロールが自在になった」と言う。ソールの進化に合わせ、オランダのクライフのような技巧派が続々と登場。従来の蹴って走るサッカーから、ボールをつないで攻めるスタイルが主流になった。

 そして90年W杯で、さらなる開発の機運を高める大きな出来事があった。全52試合で115ゴール。1試合平均ゴール数は2・21と史上最低で、「最も退屈な大会」と皮肉られた。

 大山氏 国際サッカー連盟(FIFA)から「ゴールの多く入るシューズをつくってほしい」と要請があった。それで「プレデター(略奪者)」の開発が始まりました。ボールへのパワー、カーブを増強させる目的で、突起したフィン形状のラバーをシューズ前部に搭載したものです。突起したラバーがボールインパクトの瞬間に縮み、その反発力がボールに加わることでシュートが強くなります。

 96年にはスタッドを従来の丸形状から、よりピッチをつかめる刃型形状に替えた。94年に発表されたプレデターも改良に改良を重ね、9代目も誕生。そして21世紀の今、中村俊、メッシが愛用する「F50iTUNiT」はサッカーのイメージを覆す斬新なデザインのものだ。それでも森下氏は「アイデアは尽きない」と言う。初のアフリカ開催となる南アでは、どんな新作が登場するのか。ダスラー氏の理念に基づくシューズの歩みは、そのままW杯の足跡と言えそうだ。

 ◆54年スイス大会 優勝した西ドイツは全員がアディダス製を着用。大会前年に世界で初めて開発されたスクリューインスタッド(取り換え式)付きシューズが、ぬかるんだピッチで威力を発揮した。

 ◆58年スウェーデン大会 17歳の天才ペレを擁したブラジルが、開催国スウェーデンを破って優勝。足首を保護するハイカットタイプのシューズが発表され、参加選手のほとんどが、このアディダス製を着用。

 ◆62年チリ大会 ブラジルが前回に続き、2連覇を達成。この大会のために開発された「チリ62」は、アキレス腱(けん)保護パッド、ナイロンスタッドなど、さまざまな工夫が施された。大会全32試合で使用。

 ◆66年イングランド大会 開催国イングランドが西ドイツを下し、初優勝。大会前に「チリ62」の進化版「サントス」が開発された。英国の気候を考慮し、湿気に強い皮を使用。選手の約75%がアディダス製。

 ◆70年メキシコ大会 ブラジルが3度目の優勝で、「ジュール・リメ杯」を永久保持。西ドイツのエースFWにちなみ、「ゲルト・ミュラー」と命名されたポリウレタン樹脂使用の軽量シューズが初登場。

 ◆74年西ドイツ大会 ベッケンバウアー率いる西ドイツがオランダを破って優勝。赤スタッドの「WMトップスター(WMはWelt Meisterschaftの略で、ドイツ語でW杯)」が開発される。

 ◆78年アルゼンチン大会 開催国のアルゼンチンが延長でオランダを3―1と下し、優勝。この大会に合わせ、2種類(ブラック&ホワイト)の異素材カラーソールの「ワールドカップ78」が開発された。

 ◆82年スペイン大会 FWロッシに率いられたイタリアが、西ドイツを決勝で破って44年ぶりに優勝。世界で初めてグラスファイバーを使用した「3層構造ソール」が登場。耐久性、屈曲性が一気に高まった。

 ◆86年メキシコ大会 天才マラドーナ率いるアルゼンチンが西ドイツを下し、優勝。トップモデルとして開発されたのが「クラッセ・ムンディアル」。出場24カ国中13カ国の選手がアディダスを着用した。

 ◆90年イタリア大会 西ドイツがアルゼンチンを下し、3度目の優勝。新たに開発された「エトルスコ・ユニコ」は、公式使用球と連動してつくられたシューズ。三本線が靴底までカバーし、足を保護した。

 ◆94年米国大会 ブラジルがイタリアとのPK戦を制し、4度目の優勝。フィン形状のラバーをシューズに搭載した「プレデター(略奪者)」が登場。ボールへの力を増大させる、斬新なシューズだった。

 ◆98年フランス大会 新将軍ジダン率いるフランスが、ブラジルを破って初優勝。4代目プレデター「アクセレレイター」は、足へのフィット感を向上させるため、ラバーのフィン形状をフラットな状態にした。

 ◆02年日韓大会 ブラジルが決勝でドイツを下し、5度目の優勝を果たす。6代目プレデター「マニア」は日本のピッチ環境を考え、スタッドを3種類(ソフト、ハード、ファーム)に分けて開発された。

 ◆06年ドイツ大会 イタリアがフランスをPK戦で破り、24年ぶりの優勝。8代目プレデター「アブソリュート」はシューズの先におもり(約40グラム)を埋め込み、振り子の原理からボールに伝わる力を増大した。

 ◆アディダスの発祥 1900年、創始者のアドルフ・ダスラーがドイツ・ニュルンベルク近郊に靴職人の息子として誕生。20年に地元ヘルツォーゲンアウラッハで、兄ルドルフと靴製造会社「ダスラー兄弟商会」を設立。兄が販売、弟のアドルフが製造を担当した。しかし48年、兄弟の対立によりダスラー兄弟商会は解散。アドルフはアディダス社を設立した。アディダスとは、アドルフの愛称「アディー」と「ダスラー」をつなげたもの。一方、兄ルドルフは「RUDE社」を設立し、これが翌年に「プーマ社」となった。

 ◆アディダス・グループ 1948年設立。本社はドイツ・ニュルンベルク近郊のヘルツォーゲンアウラッハ。年間売り上げは推定111億 ドル (約1兆545億円)で、ナイキの推定120億 ドル (約1兆1400億円)に次ぐ世界第2位。

 ◆森下尚紀(もりした・なおき)1972年(昭47)、東京都出身。青学大サッカー部時代、関東選手権で得点王に輝くなど活躍。卒業後、デサントを経てアディダス・ジャパン入社。中村俊輔のシューズ開発を手がけ、脚光を浴びる。

 ◆大山永路(おおやま・えいじ)1977年(昭52)、福岡県出身。中学時代は横浜Mジュニアユースでプレーし、1年下に中村俊輔がいた。帝京高から筑波大を経てアディダス・ジャパン入社。「子供に夢を」をモットーに職務に励む。


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