南アフリカW杯
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トルシエ氏、Ｗ杯北朝鮮監督に急浮上

: １１月２８日、鹿島対Ｇ大阪戦を観戦したトルシエ氏

　０２年Ｗ杯日韓大会で日本代表を初のベスト１６に導いたフィリップ・トルシエ氏（５４＝フランス）が、来年のＷ杯南アフリカ大会で北朝鮮代表を率いる可能性が１６日、急浮上した。現在、ＦＣ琉球総監督を務める同氏が、非公式ながら北朝鮮側からの接触があったことを認め、公式オファーがあれば交渉に応じる考えを明かした。北朝鮮はＷ杯１次リーグでブラジル、ポルトガルなどと同じ「死のＧ組」に入ったことから、決勝トーナメント進出へ、アジアを知り、Ｗ杯でも実績のある指導者に白羽の矢を立てた。

　北朝鮮がＷ杯で日本を初の１次リーグ突破に導いたトルシエ氏に触手を伸ばしていた。北朝鮮はキム・ジョンフン監督指揮のもと、アジア最終予選Ｂ組で２位に入り、４４年ぶりに本大会出場を決めた。前回出場の６６年イングランド大会８強や、０２年の韓国４強に並ぶ成績を、と意気込んでいたところ、４日のＷ杯抽選会で衝撃的な結果が待ち受けていた。

　ブラジル、ポルトガル、コートジボワールと同じ１次リーグＧ組になったのだ。いずれも世界トップクラスの選手を擁する強豪で、１次リーグ突破どころか、勝ち点１を挙げることすら厳しい。４４年ぶりの世界のひのき舞台で「国力」を示すためにも、Ｗ杯本大会で実績のある指導者が必要との考えに至ったようだ。

　この日、トルシエ氏は「すべて非公式なものだ」と前置きしながら、北朝鮮監督就任に前向きな考えを明かした。「コンタクトはあったが、まだ何も完了していないのでコメントできない。ただ、私は、アジアの国の挑戦にオープンな姿勢だ。私にはアジアでの経験がある。その経験をチームにもたらすことができる。１０年Ｗ杯で監督ができれば、素晴らしい冒険になる」。１４日に交渉のため北朝鮮入りする予定だったが、ビザ発給が遅れ、現在は日本で待機中だ。

　最初に白羽の矢が立ったのは、０２年Ｗ杯で韓国をベスト４に導いた現ロシア代表のフース・ヒディンク監督（６３）だ。だが、欧州での報道では他の代表やクラブの監督候補に挙がった同監督が、ロシア代表のＷ杯進出に失敗したことで、同代表への忠誠心から留任する考えを固めたという。

　もう１人の候補がトルシエ氏だった。関係者によると、北朝鮮側は１０月の４３年ぶりの欧州遠征で、フランス２部のナントと親善試合を行ったときからトルシエ氏と接触し、マークを続けてきた。北朝鮮代表では９０年代はじめに、バイエルンなどで指揮をした名将パル・チェルナイ氏が監督を務めたことがある。ただ、基本は自国人監督で外国人監督を招くのは珍しい。

　トルシエ氏が北朝鮮をＧ組２位でベスト１６に導き、日本がＥ組２位で１次リーグを突破して、それぞれが決勝トーナメント１回戦に勝てば、準々決勝で岡田ジャパン対トルシエ北朝鮮の対決も実現する。９８年にアフリカ選手権で、無名のブルキナファソの監督に開幕直前に就任して４強に導き「白い呪術（じゅじゅつ）師」と呼ばれた奇跡が、Ｗ杯で再現されるかもしれない。

　［2009年12月17日8時47分　紙面から］