南アフリカW杯
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顔上げてくれ駒野「ＰＫ戦は残酷」／日本

＜Ｗ杯：パラグアイ０（５ＰＫ３）０日本＞◇決勝トーナメント１回戦◇６月２９日◇ロフタス・バースフェルド

　夜空が、涙でにじんで見えた。ＤＦ駒野友一（２８＝磐田）は自分の力で立っていることすらできなかった。敗戦の責任を背負い込み、涙が止まらず、おえつがこみ上げてくる。みんなが声をかけてくれても言葉は耳に届かなかった。松井に起こされると２人で抱き合って泣いた。たくさんの涙が、アフリカの大地に染み込まれていった。

　「泣かなくていい」－。磐田で同僚の川口も大久保も、遠藤も、みんなが同じ言葉を口にした。それでも駒野は試合終了から１時間近くがたち、長い取材エリアを通る際も、目をまっ赤に腫らして泣き続けた。報道陣に声をかけられても、言葉が出てこない。かすかに口元で「すいません」と絞り出すのがやっとだった。全員が成功して迎えたＰＫ戦。３人目のキッカーとして放ったシュートは、軸足に力が入らずにバーにはじかれた。悲鳴と歓声が響くスタジアムで、両手で頭を抱え込んだ。

　１２０分を戦い、力は残っていなかった。右サイドバックで攻守にわたって走った。前半３７分には相手のカウンターを止め攻撃でも右から決定機をつくった。スイス合宿中は控えだったが、今野の負傷により急きょ先発が巡ってきた。連係も不十分なまま１次リーグから全試合先発。駒野に救われたことは何度もある。

　誰よりも優しく、誰よりも責任感がある男だ。常に丁寧な言葉で接し、不平不満を言うこともない。０６年ドイツ大会はＤＦ加地（現Ｇ大阪）の負傷により、急きょ初戦のオーストラリア戦に出場。目の前で大逆転劇を食らい、その後は出番がなかった。以降、雪辱を胸に誓い、オフには毎日１０キロも走るようになった。すべては日本のために勝ちたいからだった。

　誰も駒野を責めることはできない。岡田監督も「アイツのせいだと思ってはいない」とかばった。間違いなく、日本躍進の陰の立役者の１人なのだから。胸を張っていい。【益子浩一】

　［2010年7月1日10時16分　紙面から］