南アフリカW杯
ニュース

ＭＦ稲本が抑えの切り札だ！／日本

: 地元チームとの練習試合で、ドリブルで切り込む稲本（撮影・栗山尚久）

　【ジョージ（南アフリカ）＝２０日】抑えの切り札だ！　日本代表ＭＦ稲本潤一（３０＝川崎Ｆ）が世界１６強の扉を開く。２４日（日本時間２５日）の１次リーグ突破を懸けたデンマーク戦に向け、地元クラブ・ミラノとの練習試合（３０分×２本）に出場した。日本は引き分け以上で決勝トーナメント（Ｔ）進出が決まるため、終盤に守備的布陣を敷く可能性がある。０２年日韓大会では２得点を挙げるなど、初の決勝Ｔに押し上げた稲本は「火消し役」として途中出場が濃厚。「タリズマン（守り神）」「ワンダーボーイ」と呼ばれた男が、日本を再び決勝Ｔへ導く。

　経験と実績を兼ね備えた稲本が「世界１６強」を視界にとらえた。デンマークとの一騎打ちは、引き分け以上で決勝Ｔ進出が決まる。もちろん勝利こそが最高のシナリオだ。だが、状況によっては無理に勝利を求めなくてもいい。勝ちに固執するあまり、前がかりになって失点しては元も子もない。堅い守備と、冷静な判断が必要になってくる。

　稲本　Ｗ杯の戦い方は知っているので、自分としては落ち着いてプレーできると思います。（決勝Ｔに進んで）日本で応援してくれている人たちに盛り上がってもらえた方がいい。それがボクたちの役割。０２年（日韓大会）の時もそうでしたけれど（１次Ｌを）突破すればいい雰囲気になる。

　まさに「抑えの切り札」だ。デンマーク戦は終盤での途中出場が濃厚。仮にリードする展開なら試合を落ち着かせ、引き分けで拮抗（きっこう）した場面なら堅実に守り切ることが役目になる。直接対決はたった１つのミスで奈落の底に落とされる危険性もある。だからこそ豊富な経験に加え、安定感のある稲本にかかる期待は大きくなる。

　自国開催だった０２年日韓大会で「ワンダーボーイ」と呼ばれた。１次リーグのベルギー戦、ロシア戦で得点を挙げて日本を初の決勝Ｔへと導いた。「ＩＮＡＭＯＴＯ」の名前は世界中に知れ渡った。その後所属したフルハムでは「タリズマン」とも称された。あれから８年－。３０歳になり、円熟味が増してきた。

　この日、現地で行われた地元クラブ・ミラノとの練習試合にはゲーム主将として出場。開始３５秒でＦＷ岡崎に決定的なパスを通し、後半１０分にもインターセプトから決定機をつくった。守備でも中盤のバランスを保ちながら安定した力を披露。直前のスイス合宿では、練習中に談笑していたＤＦ岩政の近くに歩み寄ると、真剣な顔になりわざとボールをぶつけたこともある。ピッチ外では関西流の「ボケ突っ込み」で周囲を和ませるが、緩んだ空気は許さない。長年日本を支えてきた男はオンとオフの使い分けが誰よりうまい。

　岡田ジャパンでは控え暮らしが続いた。デンマーク戦も短い出場時間になりそうだが、任務は明確だ。「火消し役」として最後を締める。その先に２大会ぶり、自国開催以外では初のベスト１６への道が開ける。【益子浩一】

　［2010年6月21日9時42分　紙面から］