南アフリカW杯
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森本ブチ破る！「イメージある」／日本

: 練習前に入念に体をほぐす森本（撮影・栗山尚久）

　【ジョージ（南アフリカ）＝１６日】「ＤＦラインに入ってもいいから、日本のために働きたい」－。日本代表ＦＷ森本貴幸（２２＝カターニャ）が、オランダ戦（１９日、ダーバン）出場を猛烈にアピールした。今回の代表で最年少、寡黙な男が珍しく自己主張した。劣勢が予想されるオランダ戦では、出場の可能性も出てくる。試合に飢えているスーパーサブが、オランダ戦のキーマンになる。

　森本の口から、想像もできない言葉が飛び出した。チーム最年少で、先輩たちに遠慮してか、今までは取材エリアを小走りで素通りすることが多かった。足を止めても「出たら点が取れるように頑張ります。できることをやるだけ」とだけ繰り返してきた２２歳が、しっかり足を止めてハッキリとした口調で言った。

　森本　日本のために、ＤＦでもやります。というか、どこでもやります。残り１０分で、守備の時のセットプレー要員としてでもいいんです。このＷ杯でとにかく日本のために働きたいと思っています。

　今代表の中で唯一、前線の中央で粘ってポストプレーができるＦＷだが、出場のためにはきれい事ばかりを言っても仕方ない。自分のプレースタイルを捨ててでもＷ杯に出場したい。ＦＷ矢野がカメルーン戦の後半途中から、対セットプレー要員として投入されたように、チャンスさえ与えられれば、できることは何でもやる覚悟だ。

　体のぶつかり合いが激しいセリエＡでもまれた実績がある。日ごろから欧州の強いフィジカルに接してきているだけに、オランダ相手でもひるむことはない。「特にオランダだからと言って、フィジカル面で意識することはないですね。イタリアで慣れているし、体の使い方も分かっている。イメージはあります」。

　岡田監督からは、スーパーサブとして期待されている。森本はその意識が強すぎて、カメルーン戦は後半途中から出番をあきらめ、ベンチで応援する立場に徹した。「自分が出ない方が、日本にとってはいい流れだ。オレが出る時は引き分けか、負けているときだけだから」とも一瞬思った。しかし「あの流れでは僕の出番はないと思っていたけど、よく考えたら、あの場面でも僕が日本のためにやれることがあると思ったんです」と、出場意欲がふつふつわいてきた。

　岡田監督は、森本を守備要員としては考えていない。現実的には、森本の志願は却下される可能性が高い。しかし２戦目は、優勝候補の一角・オランダ相手だけに、カメルーン戦のように日本が先制して逃げ切ることは容易ではない。苦戦を強いられた時、森本の真価が問われる場面は必ずやってくる。腹をすかした若きストライカーが、言葉の端々に強調した「日本のため」に大暴れすれば、１次リーグ突破が現実となる。【盧載鎭】

　［2010年6月17日8時43分　紙面から］