南アフリカW杯
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さあカメルーン戦、大久保が決める／日本

: １２日の練習後、居残りでシュート練習する大久保（撮影・栗山尚久）

　【ブルームフォンテーン（南アフリカ）＝１３日】いよいよ出陣！　日本代表は１４日、Ｗ杯１次リーグ初戦でアフリカの強豪カメルーンと対戦する。試合前日のこの日は、試合会場のフリーステートスタジアムで非公開調整。攻撃陣で最も好調で、得点が期待されるＦＷ大久保嘉人（２８＝神戸）が決戦を前に、肺と肝臓に大病を患い闘病生活を送る父克博さん（５８）へ手紙をしたためた。左サイドで先発濃厚で「オレは前に出る」と、リスクを冒してでも得点を狙いに行くことを宣言。父のため、そして日本のために－。玉砕覚悟で勝負をかける。

　点を取るしかない。大草原から吹くアフリカ独特の風を受けながら、大久保が試合会場で最後の調整をこなした。報道陣に公開された終盤１５分の練習ではゴールの左隅、右隅へとＧＫの死角になる角度へ次々とゴールを決めていく。ただ黙々と、ひたむきにシュートを繰り返していった。もう頭の中はカメルーンを倒すことしか浮かんでこない。いよいよ始まるＷ杯に向け、無の境地に達した。

　大久保　前に出る。点を取りにいくよ。今までは失点が怖くて、下がってしまうことがあった。でも頭を切り替えた。もちろん守備はするけど、行く時は思い切って行く。相手は動き回れば（守備陣が）あたふたするから。

　勝たなければ、道は開けない。第２戦（１９日）の相手は優勝候補のオランダ。仮に初戦を落とせば、いきなり苦しい状況に追い込まれる。だからこそ、リスクを負ってでも点を取りに行く。前に出る。攻撃的ＭＦからコンバートされ、１トップに入る本田はまだ完全にフィットしていない。対照的に大久保は、岡田監督から「キレキレだ」と言われるほど好調。現地入り後、最も鋭さが増してきた。期待は高まっている。

　大久保　点を取るイメージはある。こっち（南アフリカ）に来てから、寝ている時以外はどう点を取るか、そればかり考えている。

　宿舎では１人になることが多いという。決戦の地ブルームフォンテーンに入った１２日夜には興奮からか、居てもたってもいられなくなった。福岡県内の病院で闘病生活を送る父克博さんへ手紙を書いた。中学から親元を離れ、プロ入り直後に父が肺と肝臓に病を抱えたため、男２人で酒を飲む夢は実現していない。「オレがＷ杯でゴールを決めて、おとんの病気が一時的にでも回復して、１度でいいから酒を飲みたい」－。２０日は父の５９歳の誕生日。酸素吸入器を付け、歩行も難しくなった父を、少しでも喜ばせたい。一途（いちず）な思いだった。

　大久保　やり残したことはない。ここまでやったんやから、後悔することもない。自分を信じるだけ。

　日本に歓喜を、病床の父に勇気を－。たくさんの人の夢を背負い、大久保がＷ杯という戦場に行く。【益子浩一】

　［2010年6月14日9時51分　紙面から］