南アフリカW杯
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俊輔激白「オレはここからまくってやる」

: バスに乗り込んだ中村俊は、ヘッドホンをし南アフリカに向け旅だった

　「オレはここからまくってやる」－。日本代表のＭＦ中村俊輔（３１＝横浜）が５日、悲壮な決意を激白した。日本が誇る司令塔はイングランド戦、コートジボワール戦とＷ杯直前の調整試合で控えに回り、１次リーグ初戦カメルーン戦（１４日）で先発落ちの危機にいる。中村俊は「今の立場を認めるわけにはいかない。監督に認めてもらう」と残り少ない時間での定位置奪回を宣言。自ら「最後のＷ杯」と位置づけた南アフリカで、逆襲する覚悟を固めた。また、この日岡田武史監督（５３）は、南アフリカ入り後の９日か１０日に、緊急練習試合を組む意向を示した。

　このままでは終われない。カメルーン戦で先発落ち危機にいる中村俊は、自分に言い聞かせるように言葉を絞り出した。ピッチに立つ前に負けるわけにはいかない－。悲壮な決意だった。

　中村俊　選手のオレは「はい、そうですか」と今の自分の立場（控え）を認めるわけにはいかないよね。絶対にそれはできない。絶対に認めない。だから練習も、試合も、日常生活も、とにかくやる。やり残したことがないようにやり抜くよ。ここからまくってやる。オレはそう思っているし、練習の中から必死さを出して（岡田）監督に認めてもらえるようにしないといけない。厳しいけどそこと向き合わないといけない。

　順風満帆に見えるが、これまでも２５年のサッカー人生は浮き沈みの連続だった。中学時代は横浜ユースに昇格できず、０２年Ｗ杯日韓大会も落選した。だからこそ自分と向き合い、はい上がるすべを知っている。合宿地ザースフェーを離れたこの日、電気自動車の窓からアルプスの山を見つめる姿があった。心を落ち着かせようと、必死だったのかも知れない。

　中村俊　それ（先発落ち）は自業自得だと思っている。韓国戦（５月２４日）であんなコンディションだったわけだから。（合宿前に）準備期間があったのに、大切な時期に自分の状態を上げることができなかった。それは紛れもない事実だからね。

　本大会を目前に控え、岡田ジャパンは進むべき道を見失ったように映る。４月７日セルビア戦から国際Ａマッチ４連敗。勝つことを忘れ、岡田監督が２年半かけて積み上げてきたパスサッカーすら捨ててしまった。荒波にのみ込まれた中村俊だが、言い訳はしない。

　中村俊　これまではパスを回して攻めていくサッカーをしていたけれど、今はシステムがこう（守備的布陣）になったからね。でも、それはオレが言うことじゃない。今までやってきたことがいきなりなくなってしまうのは、それを見ている人がどう思うのか。それは大事だとは思うけど。

　南アフリカを「最後のＷ杯」と位置づける。後悔だけはしたくない。幸いにもこの日、岡田監督はコートジボワール戦で無得点に終わったことで「推進力のある選手がいないと（点が）取れない」と選手起用の再考を示唆。中村俊にも反撃のチャンスは残されている。

　中村俊　自分の体をケアして、集中力を高めて。オレがやることはたくさんある。このままじゃ終われないでしょ。オレは自分の形とかイメージはあるから。１発を取る形。それは本番で必要になると信じてる。信じてやるしかない。

　まるで呪文（じゅもん）のように「信じる」と繰り返した。【取材、構成＝井上真、益子浩一】

　［2010年6月6日7時38分　紙面から］