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川口が独占激白!岡田日本の犠牲になる

幾多の試練を乗り越え人間味も増した川口能活。熱くほえてくれました
幾多の試練を乗り越え人間味も増した川口能活。熱くほえてくれました

 W杯南アフリカ大会の日本代表に選ばれたGK川口能活(34=磐田)が独占インタビューに応じ、決意と覚悟を語った。09年1月以来、度重なるケガで代表から遠ざかりながら、サプライズ選出で戻ってきた。絶望的な環境に置かれ、自信も失いかけた。家族の支えと反骨精神で、多くの壁を乗り越えてきた。最年長選手として臨む4度目のW杯。岡田監督からは、リーダーシップに高い期待を寄せられ、代表で戦える喜びを感じ再出発を誓った。

 メンバー発表前日の9日、川口は負傷後初めてフル出場する予定だった練習試合を、右内転筋に張りを訴え回避。練習試合とはいえようやくつかんだチャンス。それだけにショックも大きかった。

 川口 そのとき初めて「(代表復帰が)駄目かもしれない」って言ったよね。絶対言わないようにしてたけど、前日に初めて口に出た。90分やればゲームをやっていることを証明できると思ってたから。だからあの日、実は嫁と子どもが見に来る予定だった。本来Jの試合に招待したかったけど、練習ゲームでも見せたくて。なのに内転筋が張って、電話で嫁に伝えた。

 しかし、その夜1本の電話が入った。くるはずがないと思っていた岡田監督から。翌日にはメンバーリストに自分の名前があった。

 川口 もうパニック。ここ1年以上呼ばれず、もう代表で戦うのは無理なのかなって思ってた。それが、監督から公の場ではっきりと役割を求められて、チームに必要とされて自信を取り戻せた。自信をなくしていた自分がいたから。必要とされている以上覚悟は決めた。気負いじゃなくて覚悟を決めてチームのために戦いたい。そこまで思えたのは初めてだった。最近の岡田さんのことは、テレビでしか見てないから分からない。でも、おれが苦しんで自信を失いかけていたときに、手を差し伸べてくれたのは事実。いろんなことがフラッシュバックされた。けが、家族の支え。ずっと苦しんでたからそれを思い出したら…なんて言うんだろう…涙が出てきた。

 立ちはだかった壁は数知れない。08年に代表でレギュラー落ちをすると、09年1月のバーレーン遠征でふくらはぎ肉離れ。復帰したJ開幕2戦で10失点。9月の京都戦、相手FW金と激突し、右脛骨(けいこつ)骨折で再び長期離脱。全治6カ月の診断は、翌年のW杯出場を絶望視させる宣告だった。

 川口 自分にとってありえないシチュエーション。衝撃的でショッキングな出来事だった。一撃でほぼすべてが変わってしまって、何もできない状況から始まった。1人でトイレも歯磨きもできない。悔しかった…。でもこのまま終われない。これで終わったら「何のためにサッカーやってきたのか」って。ただ、リハビリ中、「もう無理」って何度も思ったとき、悔しさが原動力だった。

 金を許せる許せないというより、これは事故。それまで積み上げてきたものを破壊された。でも、実はけがした次の日、金から電話がかかってきた。「すいません」って落ち込んでた。彼も勇気がいったと思う。電話をすることに。「元気だして、君のストロングポイントは失っちゃいけないよ」って大人の対応をしたけど、やっぱり悔しい気持ちがあった。おれもやり切れなっかった。何度うちの嫁と悔しさを語り合ったか。この足さえ折れてなければって。でも今こうして話せるということは、それを乗り越えたということなのかもしれない。岡田さんがそのチャンスをくれた。感謝しないといけないし、今回のW杯での役割、責任は全うしたい。

 岡田監督からはリーダーシップ、キャプテンシーを期待されている。ピッチ上だけではない、チーム全体の統率を任された。

 川口 僕に話術はないから、話してどうとかいうより行動で示して、声を出して、個々で話をして、自分のやれることをやるだけ。僕が普通にやっていることを岡田さんは求めていると思う。ピッチで最後方から10人を見るだけでなく、選手にスタッフを加えたすべてを見ないといけない立場なのかもしれない。

 そう思えるようになったのもけがによる長期離脱と代表落選があったから。もう1度自身のサッカー観を見つめ直したとき、あの監督の言葉がよみがえった。

 川口 よくオシムさん(前監督)が言っていた。「自分を犠牲にして仲間のことを考えろ」と。よく水を運ぶ選手の話をしていた。ゴールした選手よりもつぶれた選手、パスした選手をたたえないといけない。決めた選手がそこにいたのがすごいことだけどみんな同じ価値がある。おぜん立てをすることは勇気がいる。それには「犠牲心」が必要。オシムさんがその言葉を使っていたか分からないけど、そういう気持ち。みんな誰もが目立ちたいと思うから。そういう気持ちやプレーを見つけてあげるのも自分の仕事なのかもしれない。仲間、チームのために戦う。サッカーにエゴは必要。でもエゴだけでは勝てない。エゴを捨てる勇気も必要。

 前回大会は守護神として臨んだが、3戦未勝利に終わった。大会前の合宿中、チーム内で大きな隔たりが生まれたことを取りざたされた。それを踏まえた上で、川口は「犠牲心」の重要性を説いた。

 川口 前回は非常に能力の高い23人が選ばれた大会。それぞれが「W杯で勝ちたい」「いいプレーをしたい」と思っていたのは事実。ただ、それがうまく回らなかったのかもしれない。反省点? それはいっぱいある。みんなが同じ方向を向かないといけない。代表が難しいのは、各クラブの主力として信頼されている選手がサブに回ること。プライドが傷つく。はっきり言ってみんな試合に出たい。だけど、それを押し殺してチームのために戦うことが大事。選手は当然、練習でスタメンを目指して戦わないといけない。でも、監督は11人を選ばないといけない。選手は監督の意思を尊重しないといけない。その11人は託されるわけだから、周りはしっかりと送り出せる雰囲気にしないといけない。

 4度目のW杯は最年長で迎える。初めて第3GKという立場からのスタート。しかし、自然とモチベーションは上がっている。

 川口 不思議なことに、過去3大会より今大会が一番高い。なぜか。監督から役割を求められているからかもしれない。簡単に言うとそういう年になったのかもしれない。現時点では3番手。3番手は経験したことがない。でも、これは自分のサッカー人生において転機。長い目で見たときプラスになる。GKというのは味方に安心感を与える存在でないといけない。その重要さが、この年で分かったのかもしれない。そうすることで自分たちのプレーを迷いなくできる空気をつくることも、GKの仕事かなって。だからGKは年齢がいけばいくほど味がでてくるんだと思う。チームのために戦うことで次につながる。4年後のブラジル大会だってあきらめてなかった。今回選ばれて、その気持ちはさらに大きくなったよ。【取材・構成=栗田成芳】

 [2010年5月19日11時58分 紙面から]


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