W杯あと1年 南アは突貫工事中
【ヨハネスブルク(南アフリカ)10日=エリス・マシャカ通信員】アフリカ大陸初のW杯開催まで、11日であと1年と迫った。来年の開催に向けて、急ピッチで建設が進められるヨハネスブルク郊外に、巨大なUFO(未確認飛行物体)が降り立った-。赤茶けたモザイク模様のこの物体、これこそがメーン会場となる「サッカーシティースタジアム」だ。世界中が注目するサッカーの祭典、W杯。それを迎えるホスト国の現状をリポートする。
ヨハネスブルク郊外の旧黒人居住区ソウェトからほど近い場所に、巨大な「UFO」は鎮座している。青空によく映える、赤茶けたモザイク模様の外観。遠くからはオーストラリアの「エアーズロック」のようにも見える。周囲には建築資材が置かれ、作業員は週末にもかかわらず休日返上で出勤。大会組織委員長のジョーダン氏が「火をともした幻想的なつぼ」と表現するサッカーシティースタジアムは、大型クレーンを使った建設作業が急ピッチで進められていた。
W杯は9都市10会場で開催される。しかし、建設遅れの感は否めない。既に完成しているのは14日開幕のコンフェデ杯で使用される4会場と、新しく建設されたのは「ポートエリザベス」1つだけ。建設中は5会場を数え、しかもケープタウンの「グリーンポイント」では、給料の遅延から作業員がストライキ中だ。それでもFIFAの担当者が「一切の遅れはない」と言えば、ジョーダン委員長も「すべての会場が年内の期日までに完成する。でなければ、私が弁償する」と自信たっぷりに話した。
会場問題に終わらず、都市インフラの整備遅れも懸念される。ヨハネスブルク、プレトリア市内には、スタジアムと空港を結ぶ「バス専用レーン」の建設が進められる。当初はコンフェデ杯で試験運行を行う予定だったが、工事は間に合わなかった。昨秋起きた経済危機のあおりを受け、失業率は21%にまで上昇。アパルトヘイト(人種隔離)政策の撤廃で民主化された94年以降、南アでは初の景気後退(92年以来17年ぶり)。大規模な公共工事を進めるにも、作業員の士気が上がらないのが現状だ。
昨年FIFAから2億 ドル (約192億円)の追加援助を受けるなどし、ジョーダン委員長は「予算面での不安はない」と言う。それでも本番を1年後に控え、45万人が見込まれる観戦旅行者を迎えるには、まだ多くの不備がある。ヨハネスブルク市内でカフェを営む女性は「ぎりぎりまで熱が入らないのが、ここの国民性なの」と苦笑する。アフリカの威信をかけて建設される巨大スタジアムは、W杯の開幕戦で「火をともす」ような熱気に包まれるのか―。世界中の目が、期待と不安の入り交じった思いで「UFO」を見つめている。
[2009年6月11日9時31分 紙面から]
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