本田が核の“南ア・スペシャル”をテスト
10年W杯南アフリカ大会出場を決めた岡田ジャパンが、早くも本大会へ向けた新攻撃オプション「南ア・スペシャル」をテストする。サッカー日本代表は10日、日産スタジアムで行われるW杯アジア最終予選でカタールと対戦する。10会場中6会場が標高1200メートル超の高地という本番の環境を想定して、運動量と持久力が要求される従来のパスサッカーに加えて、MF本田圭佑(22)を軸にした縦パス1本の速攻で得点を奪うパターンを試す。オランダ2部リーグMVPの決定力をW杯4強の「切り札」にする。
W杯切符を手にしても、ピッチの上はこれまでと変わらない緊張感が漂っていた。カタール戦を翌日に控えた試合会場での公式練習。本田が、最終ラインの闘莉王や中沢から繰り出される低空のロングパスに合わせ、全速力でゴール前のスペースへ駆け込んだ。「戦い方のベースは継続しても、それだけでは厳しい。シンプルにカウンターを仕掛ける方法も選択した方がいい」。イメージを膨らませ、得意の左足で蹴り込んだ。
縦パス1本で得点を狙う速攻は、1年後の6月11日開幕の本大会を見据えた新オプションだった。これまで全員攻撃、全員守備の「走り勝つ」パスサッカーで予選を勝ち抜いてきた。しかし、W杯開催地の南アフリカは、10会場中6会場が標高1200メートルを超える高地。空気中の酸素濃度が低いため、今の体力を著しく消耗するパスサッカーだけで、90分間戦い続けることは不可能に近い。さらに欧州や南米、アフリカ勢と強豪がそろうW杯では必ずしも、自分たちのペースでは戦えない。消耗した終盤に体力を温存しながら戦う戦術も必要だった。
その切り札が本田だ。今季オランダリーグ2部で36試合16得点を挙げ、MVPを獲得。チームを1年で1部復帰に導くなど急成長を遂げた。「これまではパサーとしてのプレーが多かったけれど、ほぼ2試合に1得点のペースで得点できたし、ゴールを狙う感覚をつかめている」と、速攻を確実に得点につなげるための、シュートの精度も格段に上がった。欧州挑戦でフィジカルの強さも磨きがかかった。
同ポジションには不動のMF中村俊がいる。MF遠藤、中村憲らも岡田ジャパンの「パスサッカー」の重要な役割を背負っている。現時点で本大会の中盤の先発メンバーを想定すると、本田はスーパーサブとしての起用が有力になる。終盤に運動量の落ちた中盤の選手に代わり、流れをガラリと変える日本の「切り札」として、カウンター攻撃の核になる可能性が高い。
W杯への新たなスタートとなるカタール戦で、いきなり新オプションが試される。「俊輔さんに並び、超えるにはまだまだ時間がかかる。自分の特長をもっと出していきたい」と、1発に気持ちを高ぶらせた。世界で結果を出すための岡田ジャパンの新たな挑戦が、再び幕を開けた。【山下健二郎】
[2009年6月10日8時1分 紙面から]
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