南アフリカW杯
ニュース

闘莉王「サムライ魂」で完封／Ｗ杯予選

: 前半、ロングパスをクリアするＤＦ闘莉王（撮影・蔦林史峰）

＜Ｗ杯アジア最終予選：日本１－０バーレーン＞◇２８日◇Ａ組◇埼玉

　ＤＦ田中マルクス闘莉王（２７＝浦和）が「サムライの魂」を胸に、チームを最終予選３戦連続完封に導いた。１４日のリーグ東京戦で負傷して７針を縫った右前頭部には、テーピングの上に青いバンドを巻いてピッチに立った。ＤＦ中沢佑二（３１）とのコンビでバーレーンの鋭いカウンターを封じた。０３年１０月に日本国籍を取得して以来、目標としてきたＷ杯出場へ大きく前進した。

　鮮やかなジャパン・ブルーのバンドを頭に巻き、長髪を振り乱してピッチに仁王立ちした。チームを危なげない完封勝利に導いた守備陣の中心に背番号４がいた。闘莉王は「最後まで集中を切らさずにゼロで抑えられたのはよかったと思います」と安心感を表した。

　得意の攻撃を抑えて、守備に意識を集中させた。中沢とともに体を張って大柄でスピードもある相手ＦＷジョンを封じ込み、ロングボールはヘッドではじき返した。抜糸した頭部に違和感は残るが「やるしかないでしょ」と話していたように気持ちで戦い抜いた。

　昨年９月のアウェーでのバーレーン戦。３－２で勝利したものの、終盤に自らが犯したミスから失点した事実を痛感していた。親しい知人からの電話に、普段は強気の男が「最後に集中力が切れてしまった…」と申し訳なさげに悔しさを表したという。この日の勝利はリベンジでもあった。

　試合前の君が代斉唱では左胸に手を当てて精神を高揚させた。日本のために闘志むき出しに戦う姿は、まさにサムライだ。「ブラジル人の自分が日本人になった。日本人以上に日本人のプライドを持って戦えると思う」。０３年１０月に晴れて日本人になった直後、当時所属していたＪ２水戸のチームメートに誓った言葉を、５年以上経った今も、プレーで体現している。

　現在でも水戸時代に世話になった喫茶店の経営者を浦和の試合に招待し、当時の同僚がシーズン終盤にスパイク不足に陥った時は自分のスパイクを速達で送る。昨年末、浦和で慕っていた先輩ＦＷ岡野（現香港ペガサス）が戦力外となると、夜中に呼び出し、酒をくみかわしながら代表ＤＦ阿部と涙を流した。義理人情に厚い日本人が、この日の勝利で悲願のＷ杯出場へ大きく前進した。

　見事な完封劇にも、あえて「勝ち点３は勝ち点３だけど、接戦は好きじゃない。何か事故が起きて点を取られたら同点になる。２点目を取らないと」と課題を口にした。闘将は世界との戦いを常に見すえ、日本のプライドを胸に岡田ジャパンの守備を支え続ける。【菅家大輔】

　［2009年3月29日8時49分　紙面から］