南アフリカW杯
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俊輔、４連続Ｗ杯へ王手弾／Ｗ杯予選

: 後半２分、ＦＫから先制点を決めたＭＦ中村俊は両手を突き上げ歓喜に浸る

＜Ｗ杯アジア最終予選：日本１－０バーレーン＞◇２８日◇Ａ組◇埼玉

　エースの一撃で、岡田ジャパンが南アフリカ行きに王手をかけた。日本代表はＷ杯最終予選バーレーン戦に、１－０で勝利した。後半２分にセットプレーからＭＦ中村俊輔（３０＝セルティック）が左足で決勝弾。一方的に攻め込みながら、なかなか点に結びつかない重苦しい展開を、一瞬で打ち破った。日本は勝ち点を１１とし、試合のなかったオーストラリアを抜いて暫定首位。次戦の６月６日ウズベキスタン戦（アウェー）に勝てば、４大会連続４度目のＷ杯出場が決まる。

　試合を決めたのは、やはりシュンスケだった。後半２分、ゴール正面のＦＫの場面。中村俊は短くパスを出し、横のＭＦ遠藤が止めたボールを、左足でこすり上げた。壁の左端で飛び上がる、ＤＦマルズークの頭をかすめたことで、さらに強烈な縦スピンがかかる。いつも以上に高く舞い上がり、急激に落ちたボールは、ゴール右隅にふわりと吸い込まれた。

　ゴールの笛が鳴った時には、すでにバックスタンド方向に走り、歓喜のこぶしを振っていた。「プレッシャーがあった。会場が変に静かで、スタンドのみんながジーッと見入っている感じだったから」。チームは最終予選でホーム未勝利。この日も前半は、再三の決定機を決め切れなかった。

　「自分で決めたから言うわけじゃないけど、大きかったよね」。重い空気を吹き飛ばす一撃に、クールな男の喜びが爆発した。手荒な祝福の輪がとけると、唇に血がにじんだ笑顔が見えた。「分かんないけど、力が入ってたんじゃないかな？」と苦笑した。

　ほぼ想定通りの一撃だった。「壁に当たってたね。でも、あの弾道を狙っていたから」。相手の壁の中核をなすＤＦ３人は、１９０センチ近い長身を誇る。だがセットしたボールを１メートルほど動かすことで、「死角」を突いた。シュート前には、助走をいったん止めるフェイントも入れた。壁のＤＦは、反応し思わず前に出てしまった。見とがめた主審がＤＦを下げさせた瞬間、すかさずシュート。すべてが計算ずくだった。

　昨年９月の同カードアウェー戦でも、前半１８分にＦＫで先制弾。ＤＶＤで分析を重ね、ＦＫの助走に反応してしまうという相手ＧＫのクセを見切って決めた、技ありの一発だった。今回も壁の特質、ＧＫの動きを踏まえ、この日の試合で決めたのと同様の“ＦＫ”を、居残り練習で何十本も打ち込んでいた。

　前半終了間際に右手を踏まれた。相手は偶然にも、そり上げた頭で決勝弾を「アシスト」してくれたマルズークだった。「握れるから折れてはいないと思う。ヒビくらい入っているかもしれないけど」。テーピングをしてプレーを続けた。苦戦を強いられてきたバーレーンに弱気なところは見せられない。不在の２試合で敗れ、出場した３試合で勝利。うち２試合で先制弾を決め、因縁に終止符を打った。

　試合後にカタールが敗れたことで、Ｗ杯出場まであと１勝となった。だが中村俊は「特に意識をしない。もっと上に行くために、１つ１つのプレーを見直さないと」と首を振った。あくまで目標は、Ｗ杯での躍進だ。「早く決めれば、ジーコジャパンの時のように、アルゼンチンやドイツと親善試合が組めるのはいいかも」。司令塔の視線は、早くも南アフリカを射抜いていた。【塩畑大輔】

　［2009年3月29日9時41分　紙面から］