パリのシャンゼリゼ通りは歓喜の人であふれた。９８年７月１２日。フランスが３８年以来、２度目の自国開催で初優勝を飾った。

　１４日は革命記念日。２０世紀最後の大会で、世界に７カ国しかない優勝国の仲間入りを果たした。

　９０年、９４年大会はまさかの欧州予選敗退。１２年間の空白を埋めるには、母国での優勝しかない。ブラジルとの決勝で、舞台は整った。試合を決めたのは、２得点を挙げた司令塔のジダンだった。

　１次リーグ２戦目のサウジアラビア戦で、相手を踏みつける危険行為で退場。決勝トーナメント１回戦のパラグアイ戦までの２試合で出場停止処分となった。だが、復帰した準々決勝イタリア戦、準決勝クロアチア戦で、ジダンは多彩な攻撃を演出。決勝での２ゴールで、完全に汚名を返上した。

　優勝当日夜、記者はホテルで再び感動のドラマを目にすることになる。地元テレビ局がＷ杯期間中の代表に密着したドキュメントを放送。出場停止で苦悩するジダンの宿舎での表情をリアルに映し出した。日本でもその後、０２年Ｗ杯に挑むトルシエ日本のドキュメントが制作された。

　代表チームの活躍で、フランスのシラク大統領は国民栄誉賞にあたるレジオン・ドヌール勲章の騎士賞をジャケ監督以下、全選手に授与した。大会公式ソングを歌ったリッキー・マーチンが世界的な人気を得るなど、フランスのブランドが見直された大会だった。【９８年大会取材・横田和幸】