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第9回メキシコ大会
ブラジル一色の中、キラリと光った若き皇帝

 結果だけを見るとブラジル一色に彩られた大会だったが、その中で西ドイツの健闘もキラリと光った。原動力となったのは、皇帝ベッケンバウアーだ。

 20歳だった前回イングランド大会でW杯デビューし、いきなり4得点を挙げて準優勝に貢献。それから4年、今大会では司令塔としてチームを指揮した。さらに自国開催となった74年大会では、スイーパーとして最後尾で守備を支えながら、最前線にも攻め上がって得点に絡む「リベロ」という新しいポジションの確立という、偉大な足跡も残した。

 西ドイツは1次リーグを3戦全勝で勝ち上がり、準々決勝で前回大会の決勝で敗れたイングランドと対戦した。0-2とリードを許して迎えた後半23分、ベッケンバウアーが決めた反撃のゴールが試合の流れを一変させた。そして同36分にMFゼーラーのバックヘッドで同点。延長後半3分、今大会で飛び出した「爆撃機」ことFWミュラーが得意のボレーでイングランドに引導を渡した。ミュラーは1次リーグで連続ハットトリックを演じるなど、10得点で得点王。74年との2大会で挙げた通算14得点は今もW杯記録として残っている。

 疲労困ぱいで迎えた続く準決勝イタリア戦は、W杯史に残る激闘になった。ロスタイムで「カテナチオ」をこじ開け1-1の同点。延長ではベッケンバウアーが右肩を脱臼しながらテーピングで固定して試合に出続けるという、まさに「ゲルマン魂」を全世界に見せつけた。結局3-4で敗れたが、ドイツファンは今でも「ブラジルとやっても勝っていた」と悔しがっている。それだけのチームだったことは確かだ。


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