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大久保先発濃厚、ドーハで恩返し弾を

FW大久保(右)はDF安田(中央)とボールを奪い合う。左はDF闘莉王
FW大久保(右)はDF安田(中央)とボールを奪い合う。左はDF闘莉王

 【ドーハ(カタール)=16日】日本代表FW大久保嘉人(26=神戸)が「ドーハの悲報」を胸に、W杯アジア最終予選カタール戦(19日)に臨む。前日15日に初練習を行い、先発出場が濃厚になった。ドーハは、U-22(22歳以下)日本代表として合宿中の03年11月1日、プロへの道を開いてもらった元C大阪スカウトの故吉村大志郎さん(享年56)の訃報(ふほう)を受けた地。今回の出発前には故人の仏前で手を合わせ、ブラジルからの国籍変更選手の先駆けでもある恩人に勝利を誓った。

 5年前の悲しみが、よみがえってきた。砂漠に囲まれ、コーランを唱える音が響く現地での初練習を終えると、大久保は自ら切り出した。「ここでネルソン(吉村)さんが亡くなったっていう知らせを聞いたんだ。あの時は、突然だったからね。まだ(天国で)見てくれていると思うし、ここで絶対に勝ちたいよね」。

 国見高3年の00年秋。C大阪スカウトだった「ネルソン吉村」こと吉村大志郎さんの熱心な誘いで、プロになることを決めた。U-22代表としてドーハ遠征中の03年11月1日、恩人は脳出血で急逝。「悲報」を受けた因縁の地に、5年の歳月を経てA代表のエースに成長して戻ってきた。命日には所属の神戸で練習があったため、出発前の3日に仏前に手を合わせた。「必ず勝って帰ってきます」。そう誓った。

 吉村さんは日本リーグ時代に初の外国人選手としてヤンマー入りし、日本国籍を取得して国際Aマッチにも45試合に出場。闘莉王や三都主らブラジル出身日本代表の先駆けだった。大久保は生前の吉村さんから「退場が多すぎるわ!」と何度も怒られた。自分を戒めるため「まじめに頑張ります」と色紙に書いて、仏前に供えてある。敵地でのW杯予選は、一発退場した6月7日オマーン戦以来。恥ずかしい姿はもう見せられない。

 カタール戦は中盤での先発が濃厚だ。13日シリア戦でゴールを挙げたように、日本の得点源として大きな期待を背負う。「あの位置は守備もせんといけん。(ボールを)取ったら、すぐに攻撃することを考える」。日本にとっても、大久保にとっても悲劇の地ドーハで、天国の恩人に勝利のゴールをささげるつもりだ。【益子浩一】

 [2008年11月17日7時48分 紙面から]


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