日本代表が悲劇を刺激にドーハDVD持参
もう悲劇は繰り返さない-。岡田武史監督(52)ら日本代表は15日、関西空港発の飛行機でカタール・ドーハに入った。W杯最終予選第3戦のカタール戦(19日=日本時間20日未明)に向け、代表スタッフは「ドーハの悲劇」として知られる93年10月イラク戦のVTRをDVD編集し、因縁の地に持ち込んだ。同監督が15年前のテレビ解説中に絶句した衝撃の幕切れ。悲劇の瞬間を目に焼き付けることでチームのモチベーションを高め、負の歴史に終止符を打つ。
意を決した表情だった。ドーハへの出発を前に関西空港で、あらためて決意を問われた岡田監督は「いつも一緒。変わってないです」と答えた。冷静さを装うも、W杯3大会連続出場の「原点」ともいえる因縁の地での一戦に向け、身も心も引き締まる思いだった。
15年前のアジア最終予選イラク戦。日本は2-1リードで迎えたロスタイムに同点ゴールを喫し、悲願のW杯初出場は夢に消えた。当時、テレビ中継の解説を務めていた同監督はショックのあまり絶句。重い沈黙が画面を通して全国に流れた。4年後、監督としてW杯初出場を決めた岡田監督にとって「ドーハの悲劇」の屈辱が、何よりのモチベーションだった。
再び巡ってきた因縁の地でのW杯予選。かつての自分がそうだったように、悔しさをバネに気持ちを高ぶらせるため、岡田監督は悲劇の瞬間をチーム全体の目に焼き付けることにした。「ドーハの悲劇DVD」の存在を知ったFW玉田は「えっ、本当に? 新鮮だね。刺激になるね」と歓迎した。
今回のメンバーは「ドーハ組」の遺伝子を注入された選手がそろう。FW大久保はC大阪在籍時、元DFの勝矢寿延氏から苦い思い出話を散々聞かされただけに「オレが歴史を変えなきゃ」。また、やはりドーハ組の都並監督(現横浜FC監督)の下でデビューしたC大阪MF香川は「当時4歳なので覚えていないが、いろんなことを聞いた。ただし僕にとってカタールは優勝した(1月のU-19代表カタール国際)験のいい場所です」と話した。
GK楢崎、DF中沢を故障で欠き、強化試合のシリア戦(13日)も手ごたえを得るところまではいかなかった。万全な状態ではないだけに、精神的な部分が重要になってくる。日本サッカー界最大の「悲劇」を、あえて思い起こさせることで、結束力を高めていく。
[2008年11月16日9時10分 紙面から]
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